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高ダイナミックレンジ画像処理技術とMATLABシミュレーション

※代理販売の書籍につき見計い不可

商品コード:
P0308
発行元:
(株)トリケップス
発行日:
2010年11月
体裁:
B5判,108ページ+付録CD(m-fileを収録) ※本書はお届けまで1週間程度お時間を頂きます
価格(税込):
44,000
定価価格(税込):
44,000
ポイント: 400 Pt
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マーケット情報・業界動向・その他

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キーワード:

高ダイナミックレンジ/HDR/HDRI/トーンマッピング/ローカルオペレータ/グローバルオペレータ/MATLAB/画像処理

刊行にあたって

 現在、一般に市販されている撮像デバイスや出力デバイスのダイナミックレンジは現実シーンよりもはるかに狭い。例えば、一般に市販されている一眼レフディジタルカメラのダイナミックレンジは高くても80dB程度であり、人間が一度に識別できる範囲と言われている100〜120dBに遠く及ばない。近年、120dBを超えるCMOSセンサも研究開発されているが、現時点では高解像度で高SN比を得るのは難しい。これに対してHDR画像は人間の知覚輝度範囲のほとんどを表現するために考案され、上は太陽の直接光、下は低露光時のセンサの暗電流に支配される範囲までを取得可能となる。
 画像における“ダイナミックレンジ”の定義はいくつか考えられるが、表現可能な最低輝度と最高輝度の比で表すのが一般的である。従来の256階調を持つ画像フォーマットの画素値は絶対輝度を表現するわけではなく、最終的な輝度は出力デバイスに依存し、ダイナミックレンジも出力法に依存することになる。これに対して、高ダイナミックレンジ画像(High Dynamic Range Image:HDR画像)は単にダイナミックレンジが高いだけでなく、画素値が輝度値に対して線形であることが暗に求められており、ダイナミックレンジを明確に定義することができる。1990年台にコンピュータグラフィクスの分野で、そのダイナミックレンジを拡大するための画像フォーマットや色空間に対する提案がいくつかなされ、Image Based Lightingにおける大域照明問題にその高ダイナミックレンジ画像(High Dynamic Range Image:HDR画像)が積極的に使われるようになった。その後、主に高精細レンダリングや高コントラスト写真現像の分野でHDR画像が盛んに用いられるようになり、現在では多くのグラフィクスボードや画像処理ソフトウェアがHDR画像に対応している。
 高解像度、高フレームレートなどの近年の画像高精細化の動きに伴い、CG分野以外でもダイナミックレンジや画素の階調数を向上させる技術が広まっている。より微細なコントラストを表現するために、1チャネル10ビット以上の階調数を持つ液晶ディスプレイが市販され、ディジタルカメラではセンサのダイナミックレンジをそのまま保持する階調数10ビット以上のRaw画像の使用が一般的になっている。人間の視覚と同等のダイナミックレンジを実現する画像センサの研究が近年活発に行われており、120dBを超えるダイナミックレンジを持つカメラがいくつか市販されている。更には今後、車載カメラ、監視カメラ、医用画像、天体画像の分野で幅広く応用されるであろう。
 本書はHDR画像の取得法、トーンマッピング、符号化、画質評価などに関する最近の研究成果をまとめたものである。
 第1章は画像処理の基礎であり、HDR画像の取得法やトーンマッピングに必要な画像処理の基礎事項を抜粋して記載している。第2章ではHDR画像処理に関連の深い色空間と視覚特性に関して解説している。第3章ではHDR画像の基礎事項と近年の応用例を述べている。第4章では多重露光画像の統合によるHDR画像の取得方法について解説し、第5章ではHDR画像処理で最も重要な技術の1つであるトーンマッピングについて、いくつかの処理例を交えながら解説している。第6章はHDR画像符号化及び画質評価法について解説している。
 本書はMATLABのプログラムを掲載し、具体的な実装例を通して理解を深める工夫をしている。そのそれぞれの章でMATLABのプログラム例とその解説を参考にしながら読み進めることをお薦めする。
 最後に本書を書く機会を与えてくださった田上透氏、本書の作成に協力いただいた北九州市立大学博士課程神納貴生氏に感謝の意を表する。
(「まえがき」より)

奥田正浩

著者一覧

奥田正浩   北九州市立大学 国際環境工学部 准教授(工学博士)

【著者略歴】
1993年 慶應義塾大学理工学部卒業
1998年 同大学大学院理工学研究科博士課程修了、博士(工学)
1998年度 米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校客員研究員
1999年度 米国カーネギーメロン大学客員研究員
2000年度 慶應義塾大学客員研究員
2001年から北九州市立大学国際環境工学部助教授
2008年より准教授、現在に至る。

 ディジタル信号処理、マルチレート信号処理、画像符号化、3Dモデル信号処理の研究に従事。IEEE、電子情報通信学会、映像情報メディア学会会員。
工学博士(1998年慶応義塾大学)。

目次 +   クリックで目次を表示

第1章 画像処理の基礎
1.1 MATLABによる画像の入出力
1.2 画素値を操作する
1.3 ディジタルフィルタを用いた画像処理
1.3.1 平滑化フィルタ
1.3.2 MATLABによる平滑化フィルタの実装
1.3.3 微分フィルタ
1.4 エッヂ保存型フィルタ
1.4.1 非等方性拡散とMATLABによる実装
1.4.2 バイラテラルフィルタ
1.4.3 MATLABによるバイラテラルフィルタの実装
1.5 コントラスト強調
1.5.1 ヒストグラム
1.5.2 ヒストグラム伸張
1.5.3 ヒストグラム等化
1.5.4 MATLABによるコントラスト強調
 
第2章 色空間と視覚特性
2.1 測光量
2.1.1 放射測定
2.1.2 測光
2.2 色空間
2.2.1 RGB表色系とXYZ表色系
2.2.2 相互変換式
2.2.3 色空間変換行列を求めるMATLABプログラム
2.2.4 sRGB色空間
2.2.5 均等色空間
2.2.6 MATLABによる色空間の相互変換
2.3 視覚特性
2.3.1 錐体と桿体
2.3.2 視覚感度のモデル化
2.3.3 輝度順応モデル
2.3.4 その他のモデル
 
第3章 HDR画像の基礎
3.1 現実シーンのダイナミックレンジ
3.2 アプリケーション
3.2.1 イメージベースドライティング
3.2.2 超高コントラスト画像現像
3.2.3 車載カメラ
3.2.4 監視、モニタリング
3.2.5 その他
3.3 センサとダイナミックレンジ
3.3.1 センサの感度
3.3.2 ノイズとダイナミックレンジ
3.4 色空間と画像フォーマット
3.4.1 OpenEXRフォーマット
3.4.2 RadianceのRGBEフォーマット
3.4.3 LogLuvフォーマット
 
第4章 HDR画像の取得技術
4.1 多重露光画像の統合
4.1.1 カメラレスポンスカーブ
4.1.2 Mitsunaga等の手法
4.1.3 多重露光画像の統合
4.1.4 RAW画像を使用する場合
4.1.5 絶対輝度値の推定
4.1.6 多重露光画像統合のMATLABプログラム
4.2 ぼけとゴーストの抑制
4.2.1 画像のアラインメント
4.2.2 ゴーストの除去
4.3 2眼カメラを用いたHDR画像の生成
 
第5章 トーンマッピング
5.1 トーンマッピングの基礎
5.1.1 処理手順
5.1.2 グローバルオペレータとローカルオペレータ
5.2 グローバルオペレータ
5.2.1 べき乗則と対数則
5.2.2 輝度順応モデル
5.2.3 Reinhardのグローバルオペレータ
5.2.4 Dragoのオペレータ
5.3 ローカルオペレータ
5.3.1 Reinhardのローカルオペレータ
5.3.2 照明光と反射率の分離とトーンマッピング
5.3.3 Gradient領域におけるダイナミックレンジ圧縮
5.3.4 HDR動画像のトーンマッピング
 
第6章 HDR画像の符号化と画質評価
6.1 HDR画像圧縮
6.2 前処理でレンジ圧縮する手法
6.32層符号化
6.4 SNRによる画質評価
6.5 Visible Difference Predictor(VDP)
6.6 CIEΔE
6.6.1 CIEΔE94
6.6.2 CIEΔE2000