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月刊機能材料 2017年11月号

【特集】生物から着想を得た流体制御の最新研究

商品コード:
M1711
発行日:
2017年11月5日
体裁:
B5判
ISBNコード:
0286-4835
価格(税込):
4,400
ポイント: 40 Pt
関連カテゴリ:
雑誌・定期刊行物 > 月刊機能材料

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著者一覧

萩原良道  京都工芸繊維大学
小方聡  首都大学東京
大保忠司  (株)荏原製作所
能見基彦  (株)荏原製作所
大塚雅生  シャープ(株)
公文ゆい  シャープ(株)
麓耕二  青山学院大学
石川将次  京都工芸繊維大学
米澤翔  京都工芸繊維大学
山中拓己  (株)コベルコ科研
福井智宏  京都工芸繊維大学
森西晃嗣  京都工芸繊維大学
長谷川丈二  九州大学
野田浩章  (国研)産業技術総合研究所
合田英生  荒川化学工業
明渡純  (国研)産業技術総合研究所

目次 +   クリックで目次を表示

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【特集】生物から着想を得た流体制御の最新研究

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特集にあたって
Introduction

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寒天ゲルを利用した流れの抵抗低減
Drag Reduction by Ager Gels

 寒天ゲル壁を利用することで,圧力損失や摩擦抵抗の低減が可能であることを明らかにした。本研究では,矩形管流れ,一様流中に置かれた平板周りの流れ,染み込み深さ測定などの一連の実験結果より,寒天ゲル壁の抵抗低減効果はゲル濃度に大きく依存し,寒天ゲルの濃度が低いほど抵抗低減量が増加することが示された。

【目次】
1. はじめに
2. 装置および方法
 2.1 供試寒天ゲル壁
 2.2 矩形流路実験装置
 2.3 流路高さ測定
 2.4 染み込み深さ測定
 2.5 抗力測定
3. 実験結果および考察
 3.1 圧力損失測定結果
 3.2 染み込み深さ測定結果
 3.3 抗力測定結果
 3.4 低減メカニズムの考察
4. おわりに

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生物から着想を得た家電製品の価値創造
Value Creation of Home Appliances by Biomimetics

 生物から着想を得るバイオミメティクス研究が注目を集めており,様々な産業分野において応用が進みつつある。シャープ(以下,当社)はこれをネイチャーテクノロジーと称して積極的に取組み,2017年8月現在で既に22種類のネイチャーテクノロジーの実用化に成功,26品目の家電商品に適用し,商品の価値向上や新たな価値創造を実現している。このように当社は「自然に学ぶ」という方法論を駆使し,様々な商品の価値向上や新たな価値創造に取り組んでいる。ここではこれらのうち,アホウドリ・イヌワシの翼を応用したエアコン室外機,トンボの翅を応用したエアコン室内機,イルカの尾びれ・表皮しわを応用した洗濯機,蝶の翅を応用した扇風機を取り上げ解説する。

【目次】
1. エアコン室外機に鳥を応用
 1.1 用いた鳥の翼の特徴と効果
  1.1.1 アホウドリの翼平面形を応用
  1.1.2 イヌワシの翼平面形を応用
  1.1.3 小翼羽により剥離を防止
 1.2 製品の性能革新
 1.3 性能革新のメカニズム
2. エアコン室内機にトンボを応用
 2.1 用いたトンボの翅の特徴と効果
  2.1.1 トンボの翅の断面形を応用
  2.1.2 用いるのが困難な航空機翼型
  2.1.3 トンボの翅の断面形を航空機翼型に融合した新概念の翼断面形状により二律背反を打破
 2.2 製品の性能革新
 2.3 性能革新のメカニズム
3. 縦型洗濯機にイルカを応用
 3.1 用いたイルカの尾びれ・表皮しわの特徴と効果
  3.1.1 イルカの尾びれを応用
  3.1.2 イルカの表皮しわを応用
 3.2 製品の性能革新
4. 扇風機に蝶を応用
 4.1 用いた蝶の翅の特徴と効果
  4.1.1 効率と快適性の間のトレードオフ解消
  4.1.2 拡散性・直進性(収束性)に関するニーズ
 4.2 製品の性能革新と物理現象の間のジレンマ解消
5. その他の生物模倣技術の事例紹介
 5.1 ネコ科動物の舌の表面構造応用サイクロンゴミ圧縮ブレード技術
  5.1.1 ネコの舌の表面構造を応用
 5.2 ペンギンの翼/円環状魚群応用炊飯器撹拌ブレード技術
  5.2.1 ペンギンの後退翼を応用
  5.2.2 円環状魚群の習性を応用
 5.3 アマツバメの翼の平面形応用ドライヤー用ファン技術
  5.3.1 アマツバメの翼の平面形を応用
 5.4 ひまわりの種の配列(フィボナッチ)応用洗浄促進突起技術
  5.4.1 ひまわりの種のフィボナッチ配列を応用
6. おわりに

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生物の組織形状に由来する微小空間用熱交換器に関する基礎的研究
Fundamental Study on Micro Heat Exchanger Derived from Organism

 生物の組織形状に由来する微小空間用小型熱交換器に関して,2つ研究課題「魚の鰓(エラ)形状に由来する狭隘空間用高効率熱交換器に関する基礎的研究」,および「赤血球の血管内ずり流動に由来する高効率物質熱輸送システムに関する基礎的研究」について研究背景および取り組み状況について紹介する。

【目次】
1. はじめに
2. 魚の鰓(エラ)形状に由来する狭隘空間用高効率熱交換器に関する基礎的研究
3. 赤血球の血管内ずり流動に由来する高効率熱・物質熱輸送システムに関する基礎的研究
 3.1 吸水性ポリマーについて
 3.2 アルギン酸カルシウムビーズについて
4. まとめと今後の展望

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冬ガレイから着想を得た微細流路内氷スラリー流の氷成長・融解の制御
Control for the Growth and Melt of Ice Particles of Ice Slurry Flow in Mini Channels Inspired from Winter Flounder

 寒冷地に生息している魚類,昆虫,植物,菌類,バクテリアなどの生物の一部には,氷点下の環境において,これらの生物が自らの細胞の凍結により死滅しないように,氷の成長を抑制する働きを持つ物質を有している。この物質の代表例が,不凍タンパク(Antifreeze Protein:以下AFPと略す)である。以下では,寒冷地に生息する冬ガレイから抽出される不凍タンパク質であるHPLC6,HPLC6の一部を基に合成されたポリペプチドを用いた微細流路内氷スラリー流の氷成長・融解に関する研究の一部を紹介する。

【目次】
1. 研究背景
2. 研究目的
3. 研究方法
 3.1 観察装置
 3.2 氷スラリー生成装置
 3.3 柔軟触覚センサ活用案
 3.4 オリジナルセンサモジュール
4. 氷粒子融解へのHPLC6の影響
 4.1 速度計測
  4.1.1 計測手法
  4.1.2 氷スラリー流の速度計測結果
  4.1.3 氷粒子塊の移動速度へのHPLC6の影響
 4.2 濃度計測
  4.2.1 計測手法
  4.2.2 計測結果
5. 氷粒子融解へのポリペプチドの影響
 5.1 静止水溶液中の氷粒子の観察
 5.2 静止水溶液中の氷粒子計測
 5.3 水溶液流中の氷粒子計測
6. おわりに

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イルカの表皮から着想を得た波状面による乱流摩擦抵抗低減
The Reduction of Turbulent Friction Drag by Wavy Surfaces Inspired from Dolphins’ Skin

 イルカの皮膚の変形が皮膚近傍の乱流水流の構造を変えること,変形した皮膚を模擬する波状プレートを用いた実験により摩擦抗力や圧力抗力増加は二次元波状面の結果より下回ること,波状面の硬度や表面性状が抗力に影響を与えることを示した。さらに,皮膚のはがれや柔軟性についても結果を紹介した。

【目次】
1. はじめに
2. 圧力抵抗
3. 摩擦抵抗
 3.1 イルカの皮膚
 3.2 皮膚の剥がれ
 3.3 柔軟壁
 3.4 二次元波状面
 3.5 有限幅の固体波状面
 3.6 硬度の異なる波状面
 3.7 微細溝を有する波状面
4. おわりに

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小型飛翔機械の開発に向けたトンボの空力制御研究
An Evaluation of Dragonfly’s Aerodynamic Force for the Development of Flapping Micro Air Vehicles

 羽ばたき型の小型飛翔機械(MAV)の開発には,飛翔昆虫の空力特性評価が不可欠である。特にトンボはホバリング,急加速,急旋回など優れた機動力を実現しており,そのメカニズムを解明することは,優れたMAV開発へ繋がる可能性が高い。本稿ではトンボの空力に着目した数値解析によるアプローチを紹介する。

【目次】
1. はじめに
2. トンボの空力計算モデル構築
 2.1 数値流体力学(CFD)
 2.2 空力計算モデルのモデル形状
 2.3 空力計算モデルのメッシュ
 2.4 使用する計算スキーム
3. 飛行条件と評価結果
 3.1 飛行条件
 3.2 ピッチング運動が空気流動に与える影響
 3.3 前後翅位相差が空力に与える影響
4. まとめ

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[ Material Report -R&D- ]

固くて柔軟な多孔質高分子材料
Highly Stiff and Flexible Porous Polymer Monoliths

 多孔質材料は,概して「固くて脆い」か「ソフトで柔軟」のいずれかである。しかし,高分子ネットワーク構造と細孔構造の両方を制御することにより,「固くて柔軟」な低密度材料を作製することができる。本稿では,一般的な高分子材料であるフェノール樹脂系の,固くて柔軟な多孔質材料の開発とそれらの衝撃(力学エネルギー)吸収能について紹介する。

【目次】
1. はじめに
2. 多孔質フェノール樹脂の細孔構造制御
3. 多孔質フェノール樹脂の力学特性
4. 多孔質フェノール樹脂の柔軟性発現機構
5. 多孔質フェノール樹脂の力学エネルギー吸収
6. おわりに

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[ Material Report -R&D- ]

AD法を用いた樹脂基材上へのハードセラミックコート―部材軽量化,高機能化への挑戦―
Hard Ceramic Coating on Plastic Substrate by Aerosol Deposition Method -Challenge for Elements with High Function and Weight Reduction-

 プラスチック基材の上に,中間層として荒川化学の有機無機ハイブリッド膜を形成した後,AD法によりセラミック膜を形成することにより,バルクのセラミックスに等しい表面性能を持つプラスチックができる。プラスチック基材の表面硬度,耐摩擦性はガラス並みに向上した。また,得られたセラミック膜は透明性と緻密性に優れ,セラミック/プラスチック積層体は実用レベルの密着性も示した。筆者らはこのプラスチック基材上への新規なセラミックコーティング法を自動車,家電,電子端末機器など様々な業界に実用化を目指し提案していく。

【目次】
1. はじめに
2. エアロゾルデポジション法によるセラミックコーティング技術
3. 有機無機ハイブリッド膜の効果
4. 有機無機ハイブリッド膜とAD法セラミックコーティングの融合によるプラスチック基材上への積層構造形成
5. 多層積層構造の特性
6. まとめ
7. 今後の予定