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水分解光触媒技術

Photocatalytic Technology for Direct Water Splitting

★クリーンエネルギー社会へむけて,人工光合成ともみなされる期待の水素製造技術をまとめた初の成 書!!
★本多・藤嶋効果の解説から,紫外光応答性水分解光触媒のこれまでの研究,近年注目されている可視光応答性光触媒研究の現状、太陽電池を用いる光電気化学的な水分解の研究,海外での研究・トピックスなどを詳述!!

商品コード:
B0842
監修:
荒川 裕則
発行日:
2008年2月
体裁:
A5判、260ページ
ISBNコード:
978-4-88231-963-4
価格(税込):
3,960
ポイント: 36 Pt
関連カテゴリ:
ファインケミカル
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刊行にあたって

水素エネルギー社会の到来が,再び注目されている。水素を燃料として使用して,エネルギ-効率が高く,さらに環境汚染のない燃料電池自動車の開発が進み,実用化の段階に入ってきたからである。日本政府や米国政府も,産業界とともに燃料電池の研究開発や実用化に大きな力を入れ,クリーンエネルギー社会の構築を志向している。
 しかし,水素は二次エネルギーであり,水素の製造には一次エネルギーとしての化石燃料や再生可能エネルギーまたは原子力エネルギー等の投入が不可欠である。当面は,化石燃料を原料として効率の高い,かつ環境汚染の少ないプロセスで水素を製造することが必要であるが,究極的にはカーボン・フリーあるいはカーボン・ニュートラルな再生可能エネルギーを用いた水素製造法の確立が望まれよう。地球温暖化の要因となる炭酸ガスを排出しないクリーンエネルギーの開発が,21世紀を生きる我々にとって持続可能な発展を維持するために是非とも達成しなければならない課題であり,水素エネルギーは,この観点から重要である。
 無尽蔵の太陽光と水から直接水素を製造することができる光触媒技術は,人工光合成技術とも見なされ,究極的な水素製造技術の一つであろう。いわゆる太陽水素は,まだ夢技術である。その水素製造効率をみれば,まだ基礎研究の段階を出ていないが,将来的には最もインパクトの大きい技術の一つとなる可能性を秘めている。光触媒水分解による水素発生研究は,1960年台末に東京大学の本多健一先生と藤嶋昭先生により発見された本多-藤嶋効果を契機に研究開発が進められたと言っても過言ではない。
当時は,オイルショック等のエネルギー危機にも遭遇し,世界的に太陽エネルギー開発が注目された時期でもあり活発に研究された。しかし,その技術的難易度が高いせいもあり,研究は下火となっていた。
 一方,日本では,資源的な制約の特殊事情等もあってか,継続的に息の長い研究が大学や研究機関で続けられている。現在では,日本において最も積極的に研究が行われ,その研究水準の質,量とも世界のトップと言っても過言ではない。
 再び水素エネルギーが注目される中,太陽光を用いた水からの水素製造技術を考慮する上で,日本のお家芸とも言える光触媒水分解研究の歴史的な発展から現在までの研究動向を俯瞰できる資料が欲しいと思い本書を企画した次第である。本書は,6章で構成され,本多・藤嶋効果の解説から紫外光応答性水分解のこれまでの研究,近年注目されている可視光応答性光触媒研究の現状,太陽電池を用いる光電気化学的な水分解の研究,海外での研究・トピックスが紹介されている。光触媒水分解研究の歴史的な展開を把握したい方々やこれから研究を行おうとする方々のお役にたてば望外の喜びである。
 最後に,お忙しい中を本書のご執筆にご快諾をいただいた研究最前線の先生方に心より感謝を申し上げる次第である。また,本書の出版にご尽力をいただいた(株)シーエムシー出版編集部の田中寿実氏,江幡雅之氏にもお礼を述べたい。
  2003年4月吉日         (独)産業技術総合研究所 光反応制御研究センター長
              東京工業大学大学院 客員教授    荒川裕則

著者一覧

藤嶋 昭   東京大学大学院 工学系研究科 応用化学専攻 教授
佐藤真理  北海道大学 触媒化学研究センター 助教授
山下弘巳  大阪府立大学大学院 工学研究科 物質系専攻 助教授
安保正一  大阪府立大学大学院 工学研究科 物質系専攻 教授
佐山和弘  産業技術総合研究所 光反応制御研究センター  主任研究員
荒川裕則  産業技術総合研究所 光反応制御研究センター  センター長
田畑総一  大阪ガス㈱ 開発研究部 エネルギー技術研究センター
田畑研二   (財)地球環境産業技術研究機構 化学研究グループ 主任研究員
工藤昭彦  東京理科大学 理学部 応用化学科 助教授
石原達己  大分大学 工学部 応用化学科 助教授
滝田祐作  大分大学 工学部 応用化学科 教授
町田正人  宮崎大学 工学部 物質環境化学科 助教授
松村道雄  大阪大学 太陽エネルギー化学研究センター 教授
横野照尚  大阪大学 太陽エネルギー化学研究センター 助教授
阿部 竜   産業技術総合研究所 光反応制御研究センター 研究員
酒多喜久  山口大学 工学部 助教授
今村速夫  山口大学 工学部 教授
北野政明  大阪府立大学大学院 工学研究科 博士前期課程2年
竹内雅人  大阪府立大学大学院 工学研究科 博士研究員
松岡雅也  大阪府立大学大学院 工学研究科 助手
鄒 志剛   産業技術総合研究所 光反応制御研究センター  特別研究員
中戸義禮  大阪大学大学院 基礎工学研究科 化学系専攻 教授
大森 隆   京都産業大学 理学部 物理学科 助教授

目次 +   クリックで目次を表示

第1章 酸化チタン電極による水の光分解の発見              
 1.感動した水の分解 
 2..簡単に水を分解するための工夫 
 3.太陽エネルギーの大きさ 
 4.屋上での水素生成実験 

第2章 紫外光応答性一段光触媒による水分解の達成
 1.気相水光分解のための半導体光触媒
  1.1 はじめに
  1.2 Pt/TiO2光触媒による純水の光分解
  1.3 気相水分解のための光触媒設計
   1.3.1 表面修飾剤の選択
   1.3.2 最適被覆量と最適水蒸気圧
   1.3.3 水素発生用助触媒
   1.3.4 TiO2の結晶形
   1.3.5 TiO2の粒径
  1.4 気相水の光分解のための反応条件
   1.4.1 反応温度
   1.4.2 圧力
 2.高分散担持酸化チタン光触媒による気相水を水素源とする二酸化炭素の還元固定化
  2.1 はじめに
  2.2 高分散担持酸化チタンの反応機構(四配位酸 化チタン種の形成)
  2.3 高分散担持酸化チタン光触媒の調製
   2.3.1 CVD法
   2.3.2 イオン交換
   2.3.3 ゾル-ゲル法
   2.3.4 水熱合成法(ゼオライト,メソ多孔質体の合成)
   2.3.5 イオン注入法
  2.4 高分散担持酸化チタン光触媒のキャラクタリゼーション
  2.5 気相水による二酸化炭素の還元固定化反応(人工光合成)
   2.5.1 CVD法で調製した固定化担持酸化チタン/多孔質ガラス
   2.5.2 Ti/Si複合酸化物
   2.5.3 固定化担持酸化チタン/ゼオライト・メソ多孔質シリカ
  2.6 おわりに
 3.炭酸塩添加法による水の完全分解および太陽光 による水分解
  3.1 はじめに
  3.2 Pt-TiO2における炭酸塩添加効果
  3.3 炭酸塩添加法の各種半導体光触媒への応用
  3.4 TiO2電極における炭酸塩の効果
  3.5 炭酸塩存在下における水の完全分解の反応機構
  3.6 炭酸塩効果を用いた実際の太陽光での水の完全分解反応
  3.7 理論限界太陽エネルギー変換効率の計算
 4.光触媒による水分解における反応装置デザインの重要性
  4.1 はじめに
  4.2 Pt/TiO2粉末光触媒を用いた水分解における反応装置デザインの重要性
    4.2.1 光触媒による水分解反応で起きる逆反応
   4.2.2 水の光触媒分解反応の照射方向比較実験
   4.2.3 反応装置デザインと水素・酸素生成速度
  4.3 おわりに
 5.ワイドバンドギャップ半導体光触媒による高効率な水の分解反応
  5.1 はじめに
  5.2 タンタル系複合酸化物光触媒
   5.2.1 K3Ta3Si2O13光触媒
   5.2.2 タンタル酸アルカリ光触媒
   5.2.3 タンタル酸アルカリ土類光触媒
   5.2.4 ランタノイドドーピングNaTaO3光触媒
   5.2.5 タングステンブロンズ構造を持つタンタル系複合酸化物光触媒
  5.3 ニオブ系複合酸化物光触媒
   5.3.1 ニオブ酸アルカリ,アルカリ土類光触媒
   5.3.2 ニオブ酸亜鉛光触媒
  5.4 タンタル系複合酸化物とニオブ系複合酸 物光触媒の比較
  5.5 Ta,Nb以外の構成元素からなる光触媒
   5.5.1 Na2W4O13
   5.5.2 層状構造を持つBi-W,Ti系複合酸化物光触媒
  5.6 おわりに
 6.水の光完全分解のためのTa系酸化物へのドーパント効果
  6.1 はじめに
  6.2 KTaO3における水の光分解活性に及ぼすドーパントの影響
  6.3 種々の酸化物の光分解活性に及ぼす添加物効果
  6.4 おわりに
 7.層状タンタル酸塩光触媒による水分解  
  7.1 はじめに
  7.2  層状タンタル酸塩の結晶構造と光触媒活性
  7.3 層状タンタル酸塩の電子構造
  7.4 金属担持による活性向上
  7.5 層間水和能と光触媒特性
  7.6 インターカレーションおよび層間架橋と光触媒特性
 8.構造規則性酸化物半導体光触媒による水分解
  8.1 はじめに
  8.2 バルク型酸化物半導体光触媒による水分解性能
  8.3 高活性を示す層状化合物酸化物半導体光触媒
  8.4 トンネル構造型酸化物半導体光触媒による水分解
  8.5 おわりに

第3章 紫外光応答性二段光触媒による水分解
 1.2種類のチタニア光触媒セルを組み合わせた水からの水素、酸素の分離発生
  1.1 はじめに
  1.2 水からの酸素発生
  1.3 水からの水素発生
  1.4 2つの光触媒反応の連結による水の分解
  1.5 おわりに
 2.ヨウ素レドックスを用いた2段階水分解システム 
  2.1 はじめに
   2.1.1 概論
   2.1.2 一段階水分解システムの可視光応答化における問題点
   2.1.3 植物の光合成を模倣した二段階水分解システム
  2.2 レドックスを用いた二段階水分解システムの設計
   2.2.1 二段階水分解システムの問題点:レドックスの逆反応
   2.2.2 二段階水分解システムの設計指針
  2.3 ヨウ素酸・ヨウ化物レドックス系(IO3-/I-)の開発
   2.3.1 ルチル型TiO2とIO3-における選択的酸素生成反応
   2.3.2 TiO2ルチルにおける選択的酸素生成の要因:酸化反応と還元反応
   2.3.3 Pt担持アナターゼとルチルの組み合わせによる紫外光二段階水分解
   2.3.4 気体生成速度に対するpHおよびNal濃度の影響
  2.4 ヨウ素酸・ヨウ化物レドックスシステムの可視光応答化
   2.4.1 可視光応答化に必要な条件
   2.4.2 IO3-を電子供与体とする可視光酸素生成反応
   2.4.3 可視光応答性光触媒を組み合わせた可視光水分解
  2.5 おわりに

第4章 可視光応答性光触媒による水分解の達成
 1.金属イオンを添加したチタニア光触媒による水分解
  1.1 はじめに
  1.2 酸化セリウムの酸化還元機能を組み合わせた二酸化チタン光触媒
  1.3 各種金属イオン・酸化物を添加した二酸化チタン
  1.4 金属イオンを添加することによる可視光応答が発現した酸化チタン光触媒
  1.5 おわり
 2.可視光応答型酸化チタン薄膜の創製とそれを光触媒とする水の完全分解
                       
  2.1 はじめに
  2.2 実験方法
  2.3 結果と考察
   2.3.1 紫外光応答型の酸化チタン薄膜を光触媒とする水の完全分解反応とその効率に及ぼす白金担持量の影響
   2.3.2 可視光応答型の酸化チタン薄膜を光触媒とする水の完全分解反応
  2.4 おわりに
 3.可視光応答性酸化物および硫化物光触媒の開発
  3.1 はじめに
  3.2 遷移金属ドーピング系可視光応答性光触媒
   3.2.1 Cr,Sb共ドーピングチタン系酸化物光触媒
   3.2.2 遷移金属ドーピングZnS系光触媒
  3.3 価電子帯制御された可視光応答性光触媒
   3.3.1 BiVO4光触媒
   3.3.2 AgMO3(M=Ta,Nb)光触媒
  3.4 固溶体光触媒
   3.4.1 β-Ga2O3-In2O3固溶体光触媒
   3.4.2 In2O3-ZnO系光触媒
   3.4.3 AgInS2-ZnS系
  3.5 硫化物光触媒
   3.5.1 NaInS2
  3.6 おわりに
 4.可視光応答性の水の完全分解光触媒の研究開発
  4.1 はじめに
  4.2 水素製造材料としての光触媒-なぜ酸化物なのか-
  4.3 可視光で水を完全分解する酸化物触媒のデザイン
  4.4 InTaO4系光触媒の水分解活性と構造安定性
   4.4.1 InTaO4系光触媒の活性
   4.4.2 InTaO4系光触媒の構造と安定性
  4.5 InTaO4系光触媒の光物性と電子構造および触媒機能の解明
   4.5.1 InTaO4系光触媒の光物性と電子構造
   4.5.2 InTaO4系光触媒の触媒反応機能の解明
  4.6 光触媒の結晶構造及び表面ナノ構造制御
  4.7 今後の課題
  4.8 おわりに
 5..レドックス媒体を用いた二段光触媒水分解システム
   -人工光合成システムによる水の可視光完全分解-
  5.1 はじめに
  5.2 WO3系光触媒と鉄イオンレドックス媒体によるZ-スキーム型の水の完全分解
   5.2.1 Fe2(SO4)3水溶液からの酸素発生反応(PS2[O2])
   5.2.2 FeSO4水溶液からの水素発生反応(PS1[H2])
   5.2.3 鉄レドックスによる水の完全分解反応(PS1[H2]+PS2[O2])
   5.2.4 水素と酸素の分離発生
   5.2.5 電解-光触媒ハイブリッドシステム(経済性のある新水素製造方法)
  5.3 ヨウ素レドックス媒体を用いた可視光での二段階励起反応システムの実証
   5.3.1 Nal水溶液からの可視光での水素発生(PS1[H2])
   5.3.2 NalO3からの可視光での酸素発生反応(PS2[O2])
    5.3.3 ヨウ素系レドックス媒体を用いた可視光での水の完全分解(PS1[H2]+PS2[O2])
  5.4 Z-スキーム型反応システムと従来の一段光励起システムの比較
 6.色素増感光触媒による水の可視光分解
  6.1 はじめに
   6.1.1 概要
   6.1.2 色素増感による光エネルギー変換
   6.1.3 色素増感光触媒による水の分解
   6.1.4 ヨウ素レドックス二段階水分解システム
  6.2 色素増感光触媒におけるI-を電子供与体とする水素生成反応
   6.2.1 エオシンY-Pt/TiO2光触媒における水素生成
   6.2.2 各種色素における水素生成速度の溶媒依存性
   6.2.3 水・アセトニトリル混合溶媒中における色素およびヨウ素レドックスの酸化電位
   6.2.4 層状化合物を用いた逆反応の抑制
  6.3 おわりに

第5章 太陽電池材料を利用した水の光電気化学的分解
 1.太陽電池および半導体電極を利用した水の光分解
  1.1 はじめに
  1.2 太陽電池を利用した水の光分解
   1.2.1 太陽電池研究の現況
   1.2.2 水の電気分解
  1.3 半導体電極を用いる水の光電気化学的分解
   1.3.1 金属酸化物半導体電極による水の光分解
   1.3.2 金属酸化物以外の半導体電極の利用
   1.3.3 積層半導体電極による水の光分解
  1.4 おわりに
 2.光起電力水分解水素製造
  2.1 各種水素製造方法の比較
  2.2 太陽光水分解の基礎
  2.3 PV-E法によるプロジェクト研究
  2.4 PV-E法の実用化へのアイデア
  2.5 当研究室の研究現況
  2.6 PV-E法と現行水素製造法の比較
  2.7 小規模分散型PV-E法のコスト検討
  2.8 PV-E法の応用

第6章 海外での取り組み                          
 1.はじめに 
 2.太陽光を用いた水からの水素製造技術に対する技術評価
  2.1 太陽光を用いた水からの水素製造プロセスの経済性
  2.2 種々の太陽水素製造システムの比較
 3.光電気化学的セル(PECs)による水分解システム 
  3.1 GaInP2/GaAs( )タンデムセルによる水分解
  3.2 アモルファスSiタンデムセルによる水分解
  3.3 光電気化学セルの問題点
 4.酸化タングステン光電極と色素増感太陽電池を組み合わせたワンステップ水分解システム
 5.天然ガス・酸素燃焼法で作製された可視光応答性TiO2光電極を用いた水の分解システム
 6.おわりに 

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