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バイオ液体燃料の最新動向

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Latest Trends in Bio-based Liquid Fuels in Japan

★2030年度までにガソリンにバイオエタノールを最大10%混合する目標が決定!
★バイオ液体燃料製造に関する開発技術の現状を多面的に紹介した一冊!
★バイオエタノール,バイオディーゼル,航空燃料(SAF),バイオメタノール,バイオブタノールなど、バイオ液体燃料の最新動向を詳細に解説!

商品コード:
T1294
監修:
北川尚美
発行日:
2025年12月17日予定
体裁:
B5判、約240ページ
ISBNコード:
978-4-7813-1883-7

Review

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キーワード:

バイオ燃料/バイオエタノール/バイオマス/木質系バイオマス/バイオイソブタノール/発酵/セルロース/酵母/バイオディーゼル/微細藻類/航空燃料/SAF/ジェット燃料/バイオメタノール/バイオギ酸/バイオブタノール

刊行にあたって

 2021 年に閣議決定された「第六期科学技術・イノベーション基本計画」では,我が国の目指すべき未来社会像を「持続可能性と強靭性を備え,国民の安全と安心を確保するとともに,一人ひとりが多様な幸せ(well‒being)を実現できる社会」と示している。また,2024 年の「第六次環境基本計画」でも,「地上資源を基調とし,環境負荷の総量を抑えて自然資本のこれ以上の毀損を防止するとともに,自然資本を充実させ良好な環境を創出し,持続可能な形で利用することによって,ウェルビーイング/高い生活の質に結び付けていく」と述べられている。
 しかし,これらの理念を現場の研究開発に落とし込む際,その解釈が必要以上に狭く理解されることがある。例えば,「地上資源を基調とする=バイオマスを使えばよい」,「環境負荷の総量を抑える=特定の狭い範囲で環境負荷が低減していればよい」,「持続可能な形で利用=廃棄物を使えばよい」というように解釈され,特定の技術にのみ関心が向けられ,社会実装や持続可能性の観点が置き去りになることが少なくない。現在,日本の技術力低下が指摘され,「失われた30年」と言われるように,バブル崩壊以降,新たな技術の実用化例は多くない。実際に,国家プロジェクトで建設されたバイオ液体燃料製造プラントの多くが,補助金終了後に採算が取れず撤去された事例がある。
 本書は,バイオ液体燃料製造に関する技術を「一覧(メニュー)」として示すものである。重要なことは,一つの技術だけで課題を解決できるわけではなく,地域の特性に応じて「どの技術を」「どう組み合わせて」社会の中で持続的な生産と利用のシステムを構築していくのか,ということである。それぞれの技術には,必ず利点と課題がある。それらを十分に理解している研究者自身が,行政や住民と共に未来の社会像を描き,その実現に有効な技術を選択し,組合せ,システムとして設計していく支援を行うことが期待される。研究者にとって最善と思われる技術やシステムが,ユーザーにとって最適とは限らない。そのため,ユーザーと研究者が対話を重ね,使いながら技術やシステムをより適した形に育てていくことも重要である。本書が国の掲げる未来社会像に近づく一助となることを願っている。

東北大学
北川尚美

著者一覧

北川尚美   東北大学 
古野志健男  (一社)日本自動車部品工業会 
近藤元博   愛知工業大学 
西尾澄人   海上・港湾・航空技術研究所 
小西千晶   森とまちコンサルタント㈱ 
本間憲之   本間技術士・特許事務所 
浜本哲郎   アメリカ穀物バイオプロダクツ協会 
財部明郎   財部技術士事務所 
秋田紘長   日本大学 
道上 掌   日鉄エンジニアリング㈱
木内崇文   日鉄エンジニアリング㈱ 
小原 聡   東京大学 
戸髙昌俊   福岡大学 
藤元 薫   (一社)HiBD研究所    
村上弥生   (一社)HiBD研究所 
高津淑人   東京都市大学 
濵 真司   Bio-energy㈱ 
野田秀夫   Bio-energy㈱;関西化学機械製作㈱
松本かなで  ㈱レボインターナショナル 
岡崎久美子  広島大学 
南 英治   京都大学 
矢野貴久   (国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構 
室井髙城   アイシーラボ 
掛下大視   ㈱Biomaterial in Tokyo 
藤野尚人   ㈱Biomaterial in Tokyo 
泉 可也   ㈱Biomaterial in Tokyo 
竹下 毅   東京大学 
河野重行   東京大学 
青柳拓也   (一社)日本微細藻類技術協会 
西尾優作   (一社)日本微細藻類技術協会 
吉野晴貴   (一社)日本微細藻類技術協会 
福田裕章   (一社)日本微細藻類技術協会 
丸谷飛之   (一社)日本微細藻類技術協会
隈部和弘   岐阜大学 
大久保 敬  大阪大学 
宮地輝光   東京科学大学 
渡邉 彰   (公財)地球環境産業技術研究機構
乾 将行   (公財)地球環境産業技術研究機構 
田丸 浩   東北大学;三重大学名誉教授
Mohamed Yahia Eljonaid 三重大学

目次 +   クリックで目次を表示

第1章 バイオ液体燃料の持続的な生産・利用システムの構築に向けて
1 はじめに
2 バイオ液体燃料の全体像と現状把握
3 ブラジルの事例に見る:バイオ液体燃料の持続的な生産・利用システム
4 日本におけるバイオ液体燃料の持続的な生産・利用システムとは
5 おわりに

第2章 バイオ燃料
1 バイオ燃料の種類,課題と世界動向
 1.1 概要と全体動向
 1.2 バイオエタノール
 1.3 バイオディーゼル
 1.4 持続可能な航空燃料:SAF
 1.5 微細藻類生成の油脂
 1.6 バイオガス
2 バイオ燃料の最新動向とその導入の道筋
 2.1 はじめに
 2.2 我国のバイオ液体燃料の現状
  2.2.1 航空機,船舶
  2.2.2 自動車
 2.3 バイオ燃料の最新動向と導入の道筋
  2.3.1 バイオエタノール混合ガソリン
  2.3.2 バイオディーゼル
  2.3.3 SAF
 2.4 環境価値の移転
3 バイオ燃料の有効利用
 3.1 はじめに
 3.2 地球温暖化の原因
 3.3 地球温暖化の対応策
 3.4 バイオ燃料の利用形態
 3.5 液体バイオ燃料
 3.6 バイオ燃料の利用例
 3.7 バイオ燃料の有効利用の研究例
 3.8 あとがき

第3章 バイオエタノール
1 バイオエタノールの概要と事業性,課題
 1.1 はじめに
 1.2 バイオエタノールの概要
  1.2.1 バイオエタノールの位置づけ
  1.2.2 バイオエタノールの需要と供給
  1.2.3 燃料としてのバイオエタノールの位置づけ
 1.3 事業性と課題
  1.3.1 規模による事業性
  1.3.2 原料のコスト,賦存量,調達しやすさ,特長など
  1.3.3 事業化スキーム
 1.4 まとめ
2 バイオマス利用のエタノール製造技術と課題
 2.1 はじめに
  2.1.1 バイオマスについて
  2.1.2 草木の組織
 2.2 バイオマス利用のエタノールの製造の工程
  2.2.1 バイオマス原料ごとのエタノールの製造工程概要
  2.2.2 セルロース系エタノール製造の全体工程
 2.3 セルロース系エタノール製造の個別技術
  2.3.1 前処理工程
  2.3.2 糖化・発酵工程
  2.3.3 固液分離,蒸留
  2.3.4 排水処理
 2.4 セルロース系エタノール製造関連技術の動向
3 米国・世界のバイオエタノールの現状と日本での利用への期待
 3.1 原料から見たバイオエタノール
 3.2 バイオエタノール生産とその歴史
 3.3 日本の燃料バイオエタノール政策
 3.4 世界と米国のバイオエタノールの現状
 3.5 米国のバイオエタノールの将来
 3.6 米国のバイオエタノール生産者の日本市場への期待
4 バイオエタノール導入時の問題点と対策
 4.1 バイオエタノールの導入
  4.1.1 ETBEとしての導入
  4.1.2 E3ガソリンの導入
  4.1.3 E10ガソリンの導入と今後の計画
 4.2 ガソリン代替燃料としての必要条件
  4.2.1 常温常圧で液体であること
  4.2.2 揮発性があること
  4.2.3 可燃性で発熱量が大きいこと
  4.2.4 自動車を構成する部品に対して害を与えないこと
  4.2.5 オクタン価が高いこと
  4.2.6 不純物が含まれないこと
  4.2.7 貯蔵中に変質しにくいこと
  4.2.8 大量生産が可能で,安価に容易に入手できること
 4.3 ETBE方式によるバイオエタノールの導入
 4.4 バイオエタノール直接混合時の問題点
  4.4.1 サブオクタンガソリン
  4.4.2 E10ガソリンの製造
  4.4.3 E10ガソリンの問題点と対策
5 木質系バイオマスを原料に利用したバイオエタノール・バイオイソブタノールの発酵生産
 5.1 はじめに
 5.2 木質系バイオマスの前処理
  5.2.1 水熱処理
  5.2.2 酵素糖化
 5.3 バイオ燃料の生産
  5.3.1 同時糖化発酵によるバイオエタノールの生産
  5.3.2 同時糖化発酵によるバイオイソブタノールの生産
 5.4 おわりに
6 日鉄エンジニアリング㈱のセルロース系バイオエタノール製造技術
 6.1 緒言
 6.2 日鉄エンジニアリングのセルロース系バイオエタノール製造技術
  6.2.1 セルロース系バイオエタノール製造の基本フローと特徴
  6.2.2 セルロース系バイオエタノール原料としての草本系バイオマス
  6.2.3 セルロース系バイオエタノール収率向上のための取り組み
  6.2.4 実証試験機・商業実機事例紹介
 6.3 セルロース系バイオエタノールの普及・発展に向けた取り組み
  6.3.1 酵素オンサイト生産技術の開発
  6.3.2 副産リグニン利活用技術の開発
  6.3.3 未利用バイオマスへの適用拡大
 6.4 セルロース系バイオエタノールの国内製造によるネガティブエミッションへの期待
 6.5 おわりに
7 選択的発酵酵母を利用した低炭素食料増産型バイオエタノール生産
 7.1 はじめに―食料とエネルギーをめぐる新たな課題
 7.2 多収性サトウキビの開発とその課題
  7.2.1 多収性品種の開発と特性
  7.2.2 還元糖と繊維の課題
 7.3 選択的発酵酵母の利用
  7.3.1 従来型酵母による糖資化と食料競合
  7.3.2 選択的発酵酵母の特徴と産業応用への可能性
 7.4 逆転生産プロセス―食料と燃料を同時に
  7.4.1 プロセスの原理
  7.4.2 逆転生産プロセスの既存製糖工場への導入
  7.4.3 選択的発酵酵母の実用株「GYK-10」の開発
  7.4.4 プラント実証試験による安定性の確認
  7.4.5 経済性評価
 7.5 一石三鳥の効果―食料・エネルギー・低炭素化
  7.5.1 食料増産への効果
  7.5.2 エネルギー自給と工場稼働率の向上
  7.5.3 低炭素化と環境影響評価(LCA)
  7.5.4 社会実装における課題と展望
 7.6 おわりに―パラダイムシフトとしての意義

第4章 バイオディーゼル
1 バイオディーゼルとバイオエタノールの廃棄物フリーを目指した並行製造
 1.1 はじめに
 1.2 供試木材の選定とグリセリンを用いた脱リグニン方法
 1.3 種々の木材における脱リグニン挙動
 1.4 グリセリン画分の特性
 1.5 脱リグニン処理後の木粉の酵素糖化によるバイオエタノール原料の製造
 1.6 関連研究の紹介
 1.7 まとめと今後の展望
2 高品位バイオディーゼル燃料の製造技術―HiBDプロセスの開発
 2.1 はじめに
 2.2 HiBD®プロセス
  2.2.1 HiBDプロセスの概要
  2.2.2 各種油脂原料からの生成物
  2.2.3 HiBDの反応ネットワーク
  2.2.4 生成油のアップグレーディング
 2.3 実用化
  2.3.1 パイロットプラントでの製造とアップグレーディング
  2.3.2 HiBD性状
 2.4 HiBDプロセスの実用化
  2.4.1 HiBDのディーゼル燃料特性
  2.4.2 実車テスト
  2.4.3 実用プラントでの生産と製品の運転特性
 2.5 HiBDおよびHiBDプロセスの課題と展望
3 バイオディーゼル燃料の原料,製造法と実用化に向けた課題
 3.1 緒言
 3.2 多様な原料植物油
 3.3 水酸化アルカリを用いる一般的な製法
 3.4 普及の拡大に向けた課題
4 バイオディーゼル原料のフレキシビリティに寄与するプロセス技術の進展
 4.1 はじめに
 4.2 酵素を用いるバイオディーゼル製造プロセス
  4.2.1 酵素剤の革新
  4.2.2 酵素法による製造工程の特徴
 4.3 酵素法の実装事例
  4.3.1 工業生産の事例
  4.3.2 アドオン型プロセスの実装事例
 4.4 新型酵素反応器の開発事例
 4.5 おわりに
5 多様な再生可能資源による持続可能燃料製造技術と将来の展望
 5.1 はじめに
 5.2 バイオディーゼル燃料「C-FUEL」
 5.3 次世代バイオ燃料「SAF」とは
 5.4 廃食用油を原料としたSAF製造
 5.5 原料の拡大「ジャトロファ」
 5.6 木質バイオマス,高分子樹脂を燃料にしたSAF製造
 5.7 おわりに
6 微細藻類によるバイオ燃料生産
 6.1 はじめに
 6.2 バイオ燃料生産に期待される微細藻類の種類とその特徴
 6.3 併産が期待される有用物質
 6.4 遺伝子改変技術とそれによる主な成果
 6.5 おわりに
7 バイオディーゼルの低温流動性
 7.1 低温流動性とは
 7.2 低温流動性の予測モデル
 7.3 モノアシルグリセロールの影響
 7.4 おわりに
8 バイオディーゼルの酸化劣化挙動
 8.1 脂質の自動酸化
 8.2 バイオディーゼルの酸化安定性
 8.3 バイオディーゼル・軽油混合燃料の酸化劣化挙動
 8.4 おわりに

第5章 航空燃料
1 SAFの導入の背景と製造技術の概要
 1.1 はじめに
 1.2 SAF導入の背景
  1.2.1 SAF導入の国際動向
  1.2.2 国内の動向
 1.3 燃料規格(ASTM D7566 及びASTM D1655)
 1.4 CORSIA適格燃料
 1.5 SAF製造技術の概要と動向
  1.5.1 パスウェイの俯瞰図と主な製法
  1.5.2 SAF製造量の拡大見通しの検討例
 1.6 原料調達
 1.7 おわりに
2 バイオマス原料SAFの製造技術
 2.1 バイオマス原料
 2.2 油脂(廃食油)原料
  2.2.1 油脂原料
  2.2.2 油脂原料SAFの製造方法
  2.2.3 Ecofining
  2.2.4 ISOTERRAプロセス
  2.2.5 油脂原料SAFのプロセスライセンサー
 2.3 バイオアルコール原料
  2.3.1 バイオエタノール
  2.3.2 バイオエタノールからSAF(ETJ)の製造
  2.3.3 ETJプロセスライセンサー
 2.4 バイオガスのガス化合成ガス
  2.4.1 FT合成
  2.4.2 BioTfuelプロジェクト
 2.5 国内の動向
  2.5.1 日本のSAF製造
  2.5.2 SAFの製造・供給体制構築支援事業
 2.6 おわりに
3 第二世代バイオエタノールを原料としたSAF生産
 3.1 はじめに
 3.2 SAFの製造技術と供給予想
 3.3 ATJ技術によるSAF製造と国内における事業化に向けた動向
 3.4 ATJによるSAF製造について
 3.5 おわりに
4 微細藻類由来バイオジェット燃料の現状と課題
 4.1 はじめに
 4.2 微細藻類の世界市場
 4.3 独立栄養vs従属栄養
 4.4 有機炭素基質と葉緑体の代謝
 4.5 独立栄養培養,従属栄養培養,混合栄養培養
 4.6 従属栄養培養による脂質合成と蓄積
  4.6.1 クロレラ
  4.6.2 脂質合成誘導
  4.6.3 従属栄養生産と独立栄養生産のコスト論争
 4.7 環境フットプリント
 4.8 おわりに
5 微細藻類SAFの産業化に向けたIMAT基盤技術研究所の取り組み
 5.1 はじめに
 5.2 標準化への取り組み
 5.3 ライフサイクルアセスメントと技術経済性分析による多角的な評価
 5.4 おわりに
6 バイオマスからのジェット燃料製造
 6.1 緒言
 6.2 実験
  6.2.1 Co系FT合成触媒調製
  6.2.2 調製触媒のキャラクタリゼーション
  6.2.3 調製触媒のin-situ還元およびFT合成
 6.3 結果および考察
  6.3.1 調製触媒のキャラクタリゼーション
  6.3.2 同時含浸触媒における助触媒のFT合成への影響
 6.4 結言

第6章 その他燃料
1 バイオガスからバイオメタノール・バイオギ酸合成
 1.1 メタンをメタノールへ選択変換する技術
 1.2 二酸化塩素の光活性化
 1.3 フルオラス溶媒/水の二層反応系
 1.4 酪農業への実装化検討
 1.5 反応のスケールアップ
 1.6 カーボンニュートラル循環型酪農システム
 1.7 メタンを取り巻く国際動向
2 微生物によるメタノール合成
 2.1 メタノールの燃料利用とその製造の現状
 2.2 メタンを原料としたメタノール合成
 2.3 二酸化炭素を原料としたメタノール合成
 2.4 ギ酸からのメタノール生成
 2.5 ペクチンからのメタノール生成
 2.6 今後の展望
3 ブタノールのバイオ生産とバイオ燃料としての現状
 3.1 ブタノールの物性と液体燃料への適合性
 3.2 ブタノールの代替燃料としての利用状況
 3.3 イソブタノールのバイオ生産
 3.4 n‒ブタノールのバイオ生産
 3.5 セルフリー反応によるブタノール生産
 3.6 バイオブタノールの高生産化
 3.7 バイオブタノールの今後の展望
4 ソルガム残渣からのバイオブタノール製造
 4.1 はじめに
 4.2 ソルガムについて
 4.3 バイオものづくりについて
 4.4 日本のバイオエタノール政策
 4.5 バイオブタノール製造
 4.6 おわりに