キーワード:
細胞足場材料/スキャフォールド/再生医療/細胞培養/三次元培養/組織工学/脱細胞化組織/化学合成/機能性培養基材/細胞外マトリックス/ペプチドハイドロゲル/コラーゲン/ポリイミド多孔質膜/セルロースナノファイバー/素材別需要動向/メーカー動向
刊行にあたって
再生医療における足場材料(スキャフォールド)は,体内に近い環境を形成し,細胞の機能発現を支える土台として不可欠であり,組織工学や臨床応用において重要な役割を担っている。足場材料は主に生体適合性高分子,ハイドロゲル,バイオセラミックスなどから構成され,骨・軟骨再生,創傷治癒,心血管・神経組織の修復など幅広い適応が研究・開発されている。
足場材料市場は急速に拡大しており,2024年には約20億ドルと推定され,年平均10%以上で成長すると予想されている。市場拡大の背景には,高齢化に伴う慢性疾患の増加や,臓器移植のドナー不足により,既存治療法だけでなく,足場材料の組織再生への応用に期待が集まっていることにある。特に3Dバイオプリンティングやナノテクノロジーを利用した高精度・高機能な足場材料の開発が進み,患者個々に治療法を設定するパーソナライズ医療(個別化医療)への応用が加速している。スマートスキャフォールドや刺激応答性材料など次世代設計の研究も活発で,細胞制御や薬物送達機能の統合が進んでいる。
また,市場ではハイドロゲルや複合材料を用いた製品が注目されており,生体分解性や生体統合特性を両立する素材設計が重要視されている。これにより,機能性と安全性を両立した足場材料の採用が広がっている。
一方,法規制面では,日本国内では足場材料自体がヒト細胞加工物とは見なされないものの,安全性や有効性評価のために再生医療等製品として薬事審査の対象となることが多い。生体適合性や分解性,非臨床および臨床データの提出が求められ,製造管理や品質管理(GMP/GCP)も厳格に審査される。こうした動きは,改正再生医療等法および薬機法による条件付き承認制度の導入など,再生医療製品全般に対する規制枠組み強化と整合して進められている。これにより,安全性確保と迅速な実用化の両立が図られている。
世界では,北米が市場の中心となり,欧州やアジア太平洋でも成長が顕著である。日本では,iPS細胞研究の進展や関連法整備が進み,再生医療分野の研究開発体制が強化されつつある。足場材料は市場および技術革新の両面で今後も成長が期待されている。
本書の【技術・開発編】では,足場技術の材料開発,作製方法,応用展開について,第一線でご活躍の専門家の方々に解説いただいた。【市場編】では,再生医療分野を取り巻く状況を捉えるべく,国内外の市場動向,審査・規制などの制度,足場用素材の需要動向,足場材料メーカー動向をまとめた。本書が再生医療・細胞培養技術に携わる方々の一助となれば幸いである。
2026年1月
シーエムシー出版 編集部
著者一覧
羽根田 聡 積水化学工業㈱
最上聡文 東ソー㈱
山本卓司 ㈱マトリクソーム
平野義明 関西大学
大槻周平 大阪医科薬科大学
森本康一 近畿大学
國井沙織 近畿大学
田中龍一郎 ㈱クラレ
板垣 亮 ㈱クラレ
大矢修生 UBE㈱
畠山真由美 九州大学
目次 + クリックで目次を表示
第1章 脱細胞化組織の足場材料への応用
1 はじめに
1.1 脱細胞化組織の臨床導入と普及の現状
1.2 既存脱細胞化組織製品の形態と適用範囲
1.3 粉末・ゲル状脱細胞化組織と創傷治癒への応用
1.4 脱細胞化組織が有する潜在的可能性
1.5 近年の画期的な臨床展開
2 脱細胞化処理
2.1 組織内の細胞成分残渣
2.2 脱細胞化処理に用いられる界面活性剤
2.3 脱細胞化処理後の界面活性剤の洗浄
3 脱細胞化組織の滅菌
4 脱細胞化処理した組織の臨床展開
4.1 脱細胞化組織工学血管
4.2 膝靱帯再建に用いる脱細胞化腱
5 まとめ
第2章 化学合成足場材Ceglu
1 はじめに
2 細胞製造課題
2.1 材料特性に起因する課題
2.2 製造品質に繋がる課題
2.3 細胞製造産業拡大に際する課題
3 化学合成足場材Cegluの特徴と基本性能
4 培養性能およびアプリケーション
4.1 培養系の安定化
4.2 分化誘導性
4.3 コーティングアプリケーション
第3章 細胞製造を効率化する機能性培養基材
1 背景
2 機能性培養基材
3 東ソーの温度応答性培養基材
4 まとめ
第4章 細胞外マトリックスを活用した再生医療
1 はじめに
2 細胞外マトリックスとラミニンタンパク質
3 ラミニン511-E8断片の開発
4 臨床研究への応用事例
5 パールカン結合型ラミニンE8(P-LME8)の開発
5.1 背景と設計思想
5.2 分子構造と製造
5.3 作用機序
5.4 細胞種別の有効性
5.5 プロトコル設計と工学的観点
5.6 品質および規制対応
5.7 比較と限界
5.8 今後の展望
5.9 臨床応用ロードマップと実装上の要点
6 おわりに
第5章 整形外科領域での自己組織化ペプチドハイロゲルの足場材料としての応用
1 はじめに
2 自己組織化β-ヘアピンペプチドハイドロゲルの分子設計
3 ペプチドハイドロゲル(KI24RGDS)による半月板欠損修復
4 ペプチドハイドロゲル(KI24RGDS)による膝蓋腱損傷治癒効果
5 ペプチドハイドロゲル(KI24RGDS)による前十字靭帯再建後の腱-骨修復促進効果
6 まとめ
第6章 第3世代コラーゲンで作製したゲルとスポンジの医療機器への可能性
1 はじめに
2 コラーゲンの構造と特徴
2.2 第1世代コラーゲンの線維とゲル
2.3 第2世代コラーゲンの線維とゲル
2.4 第3世代コラーゲンの線維とゲル
3 コラーゲン・ゲルの物性
4 コラーゲン・スポンジ
4.1 コラーゲン・スポンジの利用
4.2 第2世代コラーゲン・スポンジ
4.3 第3世代コラーゲン・スポンジ
4.4 コラーゲン・スポンジの物理的強度
4.5 第3世代コラーゲン・スポンジの成型
5 まとめ
第7章 幹細胞の大量培養を実現するポリビニルアルコール製マイクロキャリア〈スキャポバ®〉
1 緒言
2 〈スキャポバ®〉の概要
2.1 開発の経緯
2.2 マイクロキャリアを使った動物細胞の大量培養
2.3 〈スキャポバ®〉の特長
2.4 コラーゲン分子が表面に化学結合した〈スキャポバ®〉CL
2.5 任意の細胞接着因子をコーティング可能な〈スキャポバ®〉AS
3 〈スキャポバ®〉を用いた培養事例
3.1 〈スキャポバ®〉CL を用いた間葉系間質細胞の培養
3.2 〈スキャポバ®〉AS を用いたiPS 細胞の培養
4 結言
第8章 継代操作不要な足場材「ポリイミド多孔質膜インサート」
1 はじめに
2 ポリイミド素材の特長と細胞培養足場材開発の背景
3 ポリイミド多孔質膜培養足場材の特長
4 ポリイミド多孔質膜インサート(PPI膜インサート)の仕様
5 ポリイミド多孔質膜足場材の安全性
6 ポリイミド多孔質膜足場材の今後の展望と課題
第9章 セルロースナノファイバーによる細胞制御培養基材の開発
1 はじめに
2 表面カルボキシ化CNFによる細胞外マトリックス環境の模倣
2.1 官能基導入量の制御による細胞接着・増殖性の変化
2.2 表面キトサン化キチンナノファイバーとの混合基材による細胞応答の変化
3 表面硫酸化セルロースナノファイバーによる細胞外マトリックス環境の模倣
4 表面リン酸化セルロースナノファイバーによる硬組織環境の模倣
5 おわりに
【第Ⅱ編 市場編】
第1章 再生医療の市場動向
1 再生医療の定義
2 再生医療の分類と概要
3 国内外の再生医療市場の概要
第2章 足場材料(スキャフォールド)に関連する薬事審査・規制等の制度および市場動向
1 足場材料の定義
2 2000年代に再生医療の法規制が望まれた理由
3 2013年に成立した3 つの再生医療関連法
3.1 『再生医療推進法』(正式名称は『再生医療を国民が迅速かつ安全に受け入れられるようにするための施策の総合的な推進に関する法律』)
3.2 『医薬品医療機器等法』(旧薬事法。正式名称は『医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律』)
3.3 『再生医療等安全性確保法』(正式名称は『再生医療等の安全性の確保等に関する法律』)
4 健康・医療戦略推進法
5 日本医療研究開発機構法
6 足場材料に関する日本の薬事審査・制度動向
7 足場材料に関する海外の薬事審査・制度動向
8 国内外における足場材料の製品および市場動向
8.1 北米,ヨーロッパ,アジア
8.2 日本
第3章 足場用素材別の動向(概要,毒性,製法,生産,需要,価格・荷姿,市場予測)
1 生体吸収性合成高分子
1.1 ポリL-乳酸(poly-L-lactic acid, PLLA)
1.2 ポリグロコール酸(Polyglycolic acid,PGA)
1.3 乳酸-グリコール酸共重合体(Poly(lactic‒co‒glycolic acid), PLGA)
1.4 ポリカプロラクトン(PCL)
1.5 ポリ酸無水物
1.6 ポリカーボネート
1.7 合成ポリペプチド
1.8 ポリシアノアクリレート
1.9 ポリスチレン
2 生体吸収性天然高分子
2.1 キチン・キトサン
2.2 ヒアルロン酸
2.3 コラーゲン
2.4 ゼラチン
2.5 ケラチン
2.6 ラミニン
2.7 ポリヒドロキシ酪酸(polyhydroxybutyrate,PHB)
2.8 リン酸エステル
3 無機化合物
3.1 ハイドロキシアパタイト(水酸化リン酸カルシウム)
3.2 β-TCP(β-リン酸三カルシウム)
3.3 炭酸カルシウム
3.4 ナノカーボン(CNT/グラフェン/フラーレン)
第4章 足場材料メーカー動向
1 セルシード
2 オスフェリオンバイオマテリアル(旧オリンパステルモバイオマテリアル)
3 科研製薬
4 クラレ
5 メドジェル
6 ジーシー
7 クアーズテック
8 メニコン・ライフサイエンス
9 3D MATRIX
10 ソフセラ
11 新田ゼラチン
12 ニッピ
13 高研
14 富士フイルム
15 アルブラスト
16 グンゼ
17 Aimedic MMT
18 ロートセルファクトリー東京(旧:富士ソフト)
19 東洋紡
20 ADEKA
21 ヤマト科学
22 ジンマ―バイオメット
23 Thermo Fisher Scientific
24 Crorning
25 Merck
26 Greiner Bio‒One
27 Lonza Group
28 Reprocell Incorporated
29 Jet Bio‒Filtration
30 InSphero AG
31 3D Biotek
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