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月刊BIOINDUSTRY 2004年4月号

【特集】神経変性疾患研究の最前線

商品コード:
I0404
発行日:
2004年4月12日
体裁:
B5判
ISBNコード:
-
価格(税込):
4,950
ポイント: 45 Pt
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雑誌・定期刊行物 > 月刊バイオインダストリー

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特集:神経変性疾患研究の最前線
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 特集にあたって・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
                                
 三菱化学生命科学研究所 生命科学研究部 
  神経変性疾患ユニット ユニットリーダー/主任研究員 星 美奈子

本特集号を,アルツハイマー病研究への門戸を開いてくださった今堀和友
先生に感謝の気持ちを込めてささげる。


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 アルツハイマー病:治療法開発の新たな流れ・・・・・・・・・・8

          東京大学大学院 医学系研究科 教授 井原康夫


 東京都による痴呆性老人の調査が1981,88,96年とあった。結果はど
の年度もそれほど変わらない。痴呆老人は65歳以上の老人人口の約4%を
占める。この数字は,どこの先進諸国においても同様である(4~7%)。
痴呆患者の出現率は,65歳以上75歳くらいまでは,100人につき数人とき
わめて低いが,80歳以降では,指数関数的に増大する(図1)。例えば80
歳では100人に9人の割合だが,85歳以上では,100人に21人の割合となる。
では90歳以上ではどうであろうか。これもやはり東京トの調査によると,
90歳老人では100人に40人が痴呆で,これが100歳老人になると,100人に
90人が痴呆である(図2)。このように,痴呆患者は80歳以降に急増する。
現在の理解では,80歳以降に指数関数的に増大する痴呆のほとんどはアル
ツハイマー病によるものと考えられている。このような著しい増加は,個
体の寿命が神経細胞の寿命に近づいたから生じたと考えることができる。
とすると,治療薬の開発は簡単ではないと予想されたが,近年めざましい
進歩が見られる。このスピードで開発が進めば,遠くない将来に真に有効
な治療法を手中にすることができるかもしれない。

~目次~
1.コリン作動性仮説に基づいた創薬
2.アミロイドカスケード仮説に基づいた創薬
3.その他の治療薬
 3.1 コレステロール
 3.2 エストロゲン
4.服薬の時期
5.今どうすればよいのか


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 ユビキチンシステムと鉄代謝・・・・・・・・・・・・・・・・・17
  -神経変性疾患との関連-
                 坂田真一  *1  岩井一宏 *2 

 *1 大阪市立大学大学院 医学研究科 分子制御分野 特別研究員 
 *2 大阪市立大学大学院 医学研究科 分子制御分野 教授

 鉄は生命にとって必須な微量金属であると同じに,過剰量存在すると細
胞障害性のフリーラジカルを生じ酸化ストレスの原因ともなるため,生物
は緻密な鉄代謝制御機構を有している。近年,鉄代謝制御因子を鉄依存的
にユビキチン化するユビキチンリガーゼが同定され,鉄代謝制御へのユビ
キチン系の関与が明らかになりつつある。本稿では,ユビキチンシステム
による鉄代謝制御機構と鉄代謝異常の病態への関与が示唆される神経変性
疾患について概説する。

~目次~
1.ユビキチンシステム
 1.1 タンパク質のユビキチン化
 1.2 プロテアソームによるタンパク質の分解
2.鉄代謝とその制御因子IRP
 2.1 IRPによる鉄代謝因子の制御
 2.2 IRPの細胞内鉄濃度による制御メカニズム
3.IRP2を鉄依存的に識別するユビキチンリカーゼHOIL-1
4.鉄代謝の異常と神経変性疾患
 4.1 中枢神経系における鉄代謝
 4.2 アルツハイマー病
 4.3 パーキンソン病
 4.4 その他の神経変性疾患で認められる鉄代謝異常
5.おわりに


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 加齢により障害される記憶過程とその遺伝子経路の同定・・・・・・27

(財)東京都医学研究機構 東京都神経科学総合研究所 主任研究員 齋藤 実
 

 いかなるヒトも老化に伴って起こる学習・記憶力の低下から逃れることは
できない。このような老化による学習・記憶力の低下(加齢性記憶障害,
Age-related Memory Impairement;AMI)に対する改善・解決策を講じる
ことは高齢者の社会参加,また高齢化社会におけるQuality of Lifeの達成
のために重要な課題である。AMIは学習による記憶情報の獲得から,その統合
・安定化に至る複雑な学習記憶過程(図2参照)の非特異的な障害と考えら
れてきた。筆者らは,ショウジョウバエを用いてこの架設の検証を行い,AMI
がこれまで考えられていたような学習記憶過程の非特異的な障害はなく,
amnesiac (amn)という遺伝子に依存する記憶成文(中期記憶)の形成過程に
対す極めて特異的な障害に起因することを明かにした。

~目次~
1.はじめに
2.学習記憶変異体と記憶成分の分類
 (1)獲得(LRN)to麻酔感受性記憶(STMとMTM)
 (2)麻酔耐性記憶(ARM)
 (3)長期記憶(LTM)
3.加齢による記憶障害の行動遺伝学的解析
 (1)加齢体の記憶保持曲線
 (2)加齢による匂いの嫌悪性の変化
 (3)AMIの遺伝学的解析
4.おわりに


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 神経変性疾患の遺伝子治療・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36

      自治医科大学 内科学講座 神経内科学部門 助手 村松慎一
 

 高力価ウイルスベクターをはじめとした遺伝子導入技術の進歩により,
in vivo で神経細胞や筋肉に治療用遺伝子を導入し長期間発現させることが
可能になった。既にパーキンソン病に対してはアデノ随伴ウイルスベクター
を使用した臨床試験が始まっており,今後神経変性疾患に対する遺伝子治療
の発展が期待される。

~目次~
1.はじめに
2.遺伝子治療の基礎技術
 2.1 遺伝子導入法
 2.2 AAVベクター
3.パーキンソン病
 3.1 線条体におけるドパミン合成の回復
 3.2 神経栄養因子による細胞保護
 3.3 視床下核の抑制
4.アルツハイマー病
5.筋萎縮性測索硬化症(ALS)
6.triplet repeat病
7.今後の課題と展望


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 神経変性疾患研究におけるsiRNAを用いた遺伝子発現制御・・・・・・43

             東京医科歯科大学 神経内科 講師 横田隆徳
   

 RNAiはいかなる遺伝子に対してもデザインできて,その高い特異性と発現抑
制効果から,アルツハイマー病を始めとする神経変性疾患の基礎的研究におい
ても早速応用され成果をあげている。さらに難病の多い神経変性疾患への治療
戦略としても期待されている。それは,RNAiライブラリーをはじめとする創薬
におけるツールといった側面と,short interfering RNA (siRNA) を直接疾
患に適応するという2つの方面から行われている。
本稿では,主に遺伝性神経変性疾患において変異遺伝子の変異蛋白の発現を
抑制する遺伝子治療としての臨床応用を含め,神経変性疾患研究におけるsiRNA
の研究の現状と問題点について概説する。

~目次~
1.RNAiの分子機構
2.RNAiの発現抑制効率
3.siRNAの標的遺伝子特異性
4.遺伝子治療の核酸医薬としての応用
5.siRNAの神経細胞へのデリバリー
6.siRNA過剰発現によるノックダウンマウスの作成
7.おわりに


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 蛍光相関分光法(FCS)を用いた抗原抗体反応解析および検体検出・・・52

        坂田啓司*1  藤井文彦*2  田村 守*3  金城政孝*4

*1 科学技術振興機構 研究成果活用プラザ北海道 生体-分子計測研究室 研究員 
*2 科学技術振興機構 研究成果活用プラザ北海道 生体-分子計測研究室
*3 北海道大学 電子科学研究所 教授
*4 北海道大学 電子科学研究所 助教授

~目次~
1.はじめに
2.FCS測定の原理
 2.1 装置
 2.2 観測される蛍光強度の揺らぎ
 2.3 揺らぎの解析
3.抗原抗体反応解析
 3.1 分子量に依存した核酸時間の変化
 3.2 FCSによる抗原抗体反応解析
 3.3 FCSによる解離定数の算出
 3.4 FCSによる検体検出
 3.5 蛍光相互相関分光法による検体検出
4.おわりに


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 プリオン病治療の新たな可能性・・・・・・・・・・・・・・・・・・60

                      八谷如美*1  金子清俊*2

 *1 国立精神・神経センター 神経研究所 疾病研究第7部
  (独)科学技術振興機構 研究員
 *2 国立精神・神経センター 神経研究所 疾病研究第7部 部長

 2001年9月に千葉県で日本発の牛海綿状脳症(BSE)に羅患した乳牛が発見さ
れ日本中にプリオン病に対する懸念が広がった。その一因は,英国における変
異型CJD(variantCJD)と呼称されるヒトのプリオン病がBSEに由来すると考え
られていることに起因する。またさらに,硬膜移植による医原性プリオン病の
被害も知られ大きな社会問題となっている。それにも関わらず,残念ながらプ
リオン病には現在に至るまでこれといった有効な予防法,治療法は存在してい
ない。本稿では,プリオン病治療・予防法開発の現状中心に解説する。

~目次~
1.はじめに
2.ヒトのプリオン病
 2.1 変異型CJDと孤発性CJD
 2.2 プリオン病の感染
3.プリオン説
 3.1 プリオン仮説
 3.2 プリオン複製機構
 3.3 unfolding分子の探索
 3.4 unfolding分子同定
 3.5 治療法応用への可能性
4.その他のプリオン病治療・予防法開発のアプローチ
5.おわりに


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 アミロスフェスロイド-タンパク質の自己組織化と神経変性疾患・・・・67
                                      
 三菱化学生命科学研究所 生命科学研究部 
 神経変性疾患ユニット ユニットリーダー 主任研究員  星 美奈子

 「異常構造タンパク質」の凝集と蓄積は,アルツハイマー病を初めとする多く
の神経変性疾患に共通の病態であるばかりか,病因である可能性も高くなってい
る。しかしながら,個々の疾患において凝集体の構造もその作用機序も未だ謎が
多い。筆者らは,アルツハイマー病の発症の引き金を引くとされているβアミロ
イドに由来する新たな球状構造体を見出した。その発見の経緯,ならびに今後の
展望を述べたい。

~目次~
1.はじめに
2.アミロスフェロイドの同定