キーワード:
二酸化炭素/CO2/CO2分離回収/CO2分離膜/DAC/CCUS/基礎化学品/メタン/一酸化炭素/メタネーション/メタノール/環状カーボネート/合成液体燃料/SAF/光触媒/製鉄所/CCS/市場動向/温室効果ガス/CO2利活用製品/参入企業
刊行にあたって
地球全体の平均気温が上昇しており地球温暖化が進んでいる。地球温暖化の原因は、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素などの温室効果ガスであり、これらの大気中の濃度が増加すると地表面の温度が上昇する。中でも二酸化炭素が最も温暖化への影響が大きいガスと言われており、産業革命以降における化石燃料の使用増加に伴い、大気中の二酸化炭素濃度も増加している。
日本では2020年に政府が「2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」と宣言したのを機に、地球温暖化対策の一環として「二酸化炭素の分離・回収・貯留・利用技術」への注目が急速に高まった。発電所や化学工場などから排出された二酸化炭素を分離・回収し、地中や海底深くに貯留・圧入する技術である「二酸化炭素回収・貯留」(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)。分離・回収した二酸化炭素を化学的に有用物質に変換するといった再利用技術であるCCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization and Storageの研究・実用化が国内外問わず精力的に進められている。
弊社でも以前より二酸化炭素の分離・回収・貯留・利用技術をテーマとした書籍を数多く扱ってきた。ここ数年で見ても、『脱石油に向けたCO2資源化技術―化学・生物プロセスを中心に―』(2020年)、『二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術の最新動向』(2022年)、『メタネーションとグリーン水素の最新動向』(2023年)、『二酸化炭素回収・有効利用の最新動向』(2024年)、『CO2由来液体燃料の最前線』(2024年)などを発行している。どれも反響は大きく、二酸化炭素の分離・回収・貯留・利用技術への注目の高さを実感している。
このように反響が大変大きい「二酸化炭素の分離・回収・貯留・利用技術」について、その代表的な技術について今一度まとめたい、且つ日本国内の市場動向や参入企業の動向がどうなっているのか調べてみたいとの考えから、本書を企画した。
本書【技術編】では、第一線でご活躍中の専門家の方々にお願いし、CO2分離回収技術、CO2分離膜、DAC(Direct Air Capture)技術、CO2を活用した基礎化学品合成、CO2からメタン・一酸化炭素への転換技術、CO2-メタネーション技術、メタノール製造、環状カーボネート合成、CO2原料合成液体燃料製造、SAF合成技術、光触媒を用いたCO2燃料化/資源化、製鉄所からのCO2分離回収技術、空隙スケールからみたCCSの現象理解、CCSの事業化・商業化などについての技術動向を執筆頂いた。
【市場編】では、日本の温室効果ガス排出量、CCS/CCUSの概要、CO2分離技術・材料の市場、CO2利活用製品市場動向、主要参入企業動向について調べあげた。
本書が二酸化炭素の分離・回収・貯留・利用技術に関する技術開発・研究などをされている方々へ向けて、マーケティング活動の一助となれば幸いである。
著者一覧
田中一宏 山口大学
山登正文 東京都立大学
川上浩良 東京都立大学
富永健一 (国研)産業技術総合研究所
関根 泰 早稲田大学
若山 樹 ㈱INPEX
丸田 妙 ㈱INPEX
宮本広樹 ㈱INPEX
岡﨑あづさ 東洋エンジニアリング㈱
白川誠司 長崎大学
細野恭生 千代田化工建設㈱
鎌田博之 ㈱IHI
泉 康雄 千葉大学
萩生大介 日鉄エンジニアリング㈱
後藤和也 (公財)地球環境産業技術研究機構
末包哲也 東京科学大学
松岡俊文 京都大学名誉教授;(公財)深田地質研究所
本郷 尚 ㈱三井物産戦略研究所
シーエムシー出版 編集部
目次 + クリックで目次を表示
第1章 CO2分離回収技術開発の動向
1 はじめに
2 CO2の発生量と排出源
3 CO2回収技術と課題点
4 今後の展望
第2章 CO2分離膜
1 はじめに
2 ガス分離膜の基礎
2.1 ガス分離膜モジュール
2.2 ガス分離膜モジュールの操作
2.3 ガス分離膜の性能評価
3 分離膜の種類と分離活性層の孔
3.1 分離膜の断面構造
3.2 高分子膜
3.3 ミクロ多孔膜
3.4 高分子膜とミクロ多孔膜の比較
4 注目のCO2分離膜
5 主なCO2分離膜の基本性能比較
第3章 大気中から二酸化炭素を回収するDAC技術の開発
1 はじめに
2 DACの現状について
3 気体分離膜型DACの可能性
4 高分子気体分離膜とその限界
5 Mixed Matrix Membrane(MMM)
6 ナノスペースを有するシリカナノ粒子添加超高CO2透過高分子気体分離膜
6.1 ナノスペース
6.2 ナノスペースを有する複合気体分離膜の気体透過特性
6.3 高CO2透過高分子気体分離膜の進化
6.4 DAC指向第3世代ナノ粒子複合膜
第4章 CO2を活用した基礎化学品合成
1 緒言
2 低温メタノール合成
3 エタノール合成
4 アクリル酸合成
5 結言
第5章 低温での二酸化炭素からメタン・一酸化炭素への転換技術
1 二酸化炭素をメタンや一酸化炭素に転換する意義
2 二酸化炭素のメタンへの転換の概略
3 二酸化炭素のメタン化の性能評価と反応メカニズム解析
4 二酸化炭素からの一酸化炭素への転換の概略
5 二酸化炭素の一酸化炭素への転換の性能評価と反応メカニズム解析
6 今後の動向
第6章 CO2-メタネーション技術の開発状況と事業化展望
1 はじめに
2 企業における技術開発等の状況
2.1 国内企業状況
2.2 国外企業状況
3 INPEXの技術開発状況
3.1 INPEXにとってのCO2-メタネーションの意義
3.2 NEDO-CO2有効利用可能性調査事業
3.3 NEDO-CO2有効利用技術開発事業
3.4 NEDO-CO2排出削減・有効利用技術開発事業
4 事業化展望
5 おわりに
第7章 再生可能エネルギー由来の水素とCO2からのメタノール製造
1 はじめに
2 メタノールの需要と日本における位置づけ
2.1 メタノールの需要
2.2 日本における位置づけ
3 再エネ水素とCO2からのメタノールの合成方法
3.1 天然ガスからのメタノール合成方法との違い
3.2 メタノール合成反応器
3.3 再エネ由来の水素を使用する場合の課題
4 おわりに
第8章 温和な条件下でのCO2からの環状カーボネート合成
1 はじめに
2 大気圧下での環状カーボネート合成のための二官能性第四級ホスホニウム塩触媒の設計
3 実用的アンモニウム塩触媒を用いた環状カーボネート合成
4 ヨウ化カリウム-エチレングリコール錯体触媒を用いた実用的環状カーボネート合成
5 おわりに
第9章 CO2原料合成液体燃料製造のサプライチェーンと持続可能性
1 はじめに
2 合成液体燃料の必要性とサプライチェーンの概要
2.1 合成液体燃料の必要性
2.2 合成燃料サプライチェーン
3 合成燃料製造のサプライチェーンの要素技術
3.1 水素/CO2供給
3.2 合成燃料製造
4 トータルシステムとしての持続可能性と事業性
4.1 エネルギー効率視点
4.2 炭素強度視点
4.3 経済性視点
5 技術開発・事業化動向と今後の展開
第10章 PtLによるCO2を原料とした持続可能な航空燃料(SAF)の合成技術
1 はじめに
2 CO2を原料とした液体炭化水素の合成
3 CO2直接水素化触媒およびプロセスの開発
4 今後の展望
第11章 光触媒を用いたCO2燃料化/資源化
1 本研究の背景
2 13CO2から13COを光生成
3 13CO2から13CH4を光生成
4 13CO2から13C2H6および13C3H8を光生成
5 13COから13C2H4および13C3H6を光生成
6 13CO2とH2Oから13CH4,13C2H6および13C3H8を光生成
7 密度汎関数計算によるCO2の光燃料化/資源化反応経路追跡
8 まとめと展望
第12章 製鉄所からのCO2分離回収技術開発
1 製鉄所からの排出CO2
2 製鉄所におけるCO2回収
2.1 温暖化対策技術としてのCO2分離回収
2.2 製鉄ガスを対象としたCO2分離回収の取り組み
2.3 製鉄所プロセス排ガスを対象としたCO2分離回収技術の研究開発(海外事例)
3 省エネ型化学吸収プロセス開発の経緯
4 ESCAPⓇプロセス紹介
4.1 高い熱エネルギー効率
4.2 低温再生
4.3 商業化適用技術
5 実績紹介
6 今後の展開
第13章 岩石の空隙スケール流動から見たCCSの理解
1 はじめに
2 多孔質構造
3 空隙スケールとダルシースケール
4 流動様式
5 毛管圧トラップ
6 溶解
7 おわりに
第14章 CCS事業化への展望と課題
1 はじめに
2 CCS事業化の変遷
3 CCS事業化の課題
3.1 社会受容性の問題
3.2 技術の問題
3.3 政策・法制度の問題
3.4 経済性の問題
4 マーケットプル政策とテクノロジープッシュ政策
4.1 米国でのCCS事業化の例
4.2 欧州でのCCS事業化の例
5 まとめ
第15章 CCSの本格商業化に向けた道筋
1 CCS需要と社会実装のボトルネック
2 投資拡大のための課題
2.1 概観
2.2 投資リスクの整理
2.3 技術リスク―貯留の確実性
2.4 経済性
2.5 代替手段/技術との価格競争力
2.6 バリューチェーンリスク
2.7 規制や許認可などの制度
2.8 環境リスク
2.9 評判リスク
3 2030年商業化のための政府の支援と投資環境整備
3.1 技術イノベーション支援
3.2 貯留のインフラ化
3.3 制度整備~責任範囲の限定
3.4 収入の確保と経済性確保
3.5 評判リスク
4 まとめ
【市場編】
第1章 日本の温室効果ガス排出量
1 温室効果ガス総排出量
2 部門別排出量
2.1 発電所
2.2 天然ガス
2.3 石油精製
2.4 鉄鋼
2.5 セメント
2.6 アンモニア
2.7 バイオガス
2.8 バイオマス発電
2.9 輸送
第2章 CCS/CCUSの概要
1 CCS/CCUSとは
2 国内における政策・取り組み
2.1 CCSの大規模実証実験の実施
2.2 『CCS事業法(二酸化炭素の貯留事業に関する法律)』の成立
第3章 CO2分離技術・材料の市場
1 化学吸収法
2 物理吸収法
3 物理吸着法
4 膜分離法
5 深冷分離法
6 DAC(Direct Air Capture)
7 その他
7.1 酸素燃焼法
7.2 化学ループ燃焼法
第4章 CO2利活用製品市場動向
1 EOR
2 炭酸ガス/ドライアイス
3 メタノール
4 エタノール
5 メタン
6 尿素
7 合成ガス
8 ポリカーボネート
9 ポリウレタン
10 プロパン
11 オレフィン
12 BTX(Benzene,Toluene,Mixed Xylene)
13 エチレングリコール
14 ギ酸
15 コンクリート/セメント
16 炭酸塩
17 炭素
18 合成燃料
19 藻類由来バイオ燃料
第5章 主要参入企業動向
1 IHI
2 INPEX
3 ENEOS
4 大阪ガス
5 鹿島建設
6 カナデビア(旧・日立造船)
7 川崎重工業
8 ENEOS Xplora(JX石油開発)
9 JFEエンジニアリング
10 積水化学工業
11 太平洋セメント
12 千代田化工建設
13 東京ガス
14 東芝
15 東ソー
16 東洋エンジニアリング
17 日本ガイシ
18 三菱ガス化学
19 三菱ケミカル
20 三菱重工エンジニアリング
二酸化炭素回収・有効利用の最新動向
価格(税込): 66,000 円
二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術の最新動向
価格(税込): 63,800 円
CO2由来液体燃料の最前線
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価格(税込): 61,600 円