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有機分子触媒の開発と工業利用 

Development of Organocatalysts and Their Application to Industry

★ 近年急速な進展を遂げている有機分子触媒開発を網羅した一冊!
★ 天然物合成・医薬有用化合物の合成など,実践的な使い方を多数収載!
★ ワンポット反応や不斉ドミノ反応をはじめ,有機分子触媒の利用は今後も多彩!

商品コード:
T1073
監修:
秋山隆彦
発行日:
2018年3月30日
体裁:
B5判・333頁
ISBNコード:
978-4-7813-1323-8
価格(税込):
90,200
ポイント: 820 Pt
関連カテゴリ:
ファインケミカル > 医薬
ファインケミカル > 触媒・酵素・天然物
ファインケミカル > 合成技術・製造プロセス開発

Review

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キーワード:

キラルブレンステッド酸触媒/不斉合成/理論計算/選択的分子変換/速度論的光学分割/縮合反応/DMAPO/グアニジン触媒/相間移動触媒/ラセミ化/アルキル化/ワンポット反応/天然物合成/医薬中間体

刊行にあたって

 生理活性物質や医薬品あるいはその原料などの光学活性な化合物を、触媒的に光学純度良く合成したい場合、皆さんはどのような触媒を用いるだろうか?まず頭に思い浮かぶのはキラルな遷移金属錯体あるいは生体触媒であろう。キラル触媒による不斉合成によりノーベル化学賞を2001年に受賞した野依、Sharpless、Knowles らの業績を始めとして、膨大な数のキラル金属錯体ならびにそれらを用いた不斉触媒反応が開発されている。さらに、生体触媒も古くから用いられてきているが、近年は、遺伝子をクローニングすることにより、より優れた生体触媒が開発され、工業的な利用も進んできている。

 一方、金属を含まない、比較的低分子量の有機化合物が優れた不斉触媒作用を示すことが見出され、有機分子触媒または有機触媒(Organocatalyst)として大きな注目を集めている。有機分子触媒は、高分子量の生体触媒の触媒として機能する部分のみを抽出した触媒と考えることもできる。また、金属を含まないことから、残留金属の問題もなく、また一般に安定であり、取り扱いも容易なことから大きな注目を集め、2000 年頃から急激に大きな発展を遂げている。

 本書では、金属触媒、生体触媒に続く第三の触媒として近年大きな発展を遂げている「有機分子触媒」に着目し、有機分子触媒の最新の動向、使い方のコツを、最先端で活躍中のアカデミアおよび産業界の研究者が紹介する。本書により、今後益々多くの研究者が有機分子触媒に関心をもち、有機分子触媒を用いた新たな実用的な触媒プロセスが生み出され、企業のプロセス研究、大量合成等に用いられることを期待する。

秋山隆彦
(「刊行にあたって」より抜粋)

著者一覧

秋山隆彦  学習院大学
菊池 隼  東北大学
寺田眞浩  東北大学
山中正浩  立教大学
大松亨介  名古屋大学
浦口大輔  名古屋大学
大井貴史  名古屋大学
石原一彰  名古屋大学
丸岡啓二  京都大学
藤岡弘道  大阪大学
村井健一  大阪大学
菅 誠治  岡山大学
萬代大樹  岡山大学
矢内 光  東京薬科大学
竹本佳司  京都大学
上田善弘  京都大学
川端猛夫  京都大学
細谷圭介  東京農工大学
長澤和夫  東京農工大学
鳴海哲夫  静岡大学
喜屋武龍二 静岡大学
渕辺耕平  筑波大学
市川淳士  筑波大学
根東義則  東北大学
柴富一孝  豊橋技術科学大学
工藤一秋  東京大学
赤川賢吾  東京大学
矢島知子  お茶の水女子大学
上條 真  山口大学
笹井宏明  大阪大学
滝澤 忍  大阪大学
椎名 勇  東京理科大学
殿井貴之  東京理科大学
中田健也  島根大学
林 雄二郎  東北大学
岩渕好治  東北大学
山田 健  神奈川大学
砂塚敏明  北里大学
磯野拓也  北海道大学
佐藤敏文  北海道大学
川戸勇士  静岡県立大学
濱島義隆  静岡県立大学
石川勇人  熊本大学
畑山 範  長崎大学
池本哲哉  住友化学㈱
金田岳志  第一三共㈱

目次 +   クリックで目次を表示

【第1編:制御システムの開発】

第1章 キラルブレンステッド触媒を用いた不斉触媒反応
1 はじめに
2 キラルリン酸を用いたMannich型反応の開発
3 ベンゾチアゾリンを水素供与体として用いたケトイミンの水素移動型不斉還元
4 インドリンの酸化的速度論的光学分割
5 分子内アルドール反応
6 Friedel-Crafts反応を用いた3位置換インドール誘導体の不斉合成反応
7 軸性不斉を有するキラルビアリールの不斉合成
8 結語

第2章 キラルブレンステッド酸触媒を用いた不斉変換反応―最近の展開―
1 はじめに
2 キラルリン酸触媒の分子設計と酸性度向上へのアプローチ
3 ラセミ体を出発物質とする不斉置換反応によるエナンチオ収束合成
4 1,3-ジチアン誘導体の環拡大反応に基づく立体制御機構の解明
5 ビニルエーテルを用いた分子間アセタール化反応によるアミノアルコールの速度論的光学分割
6 高活性キラルブレンステッド酸触媒によるスチレン誘導体への分子間不斉求核付加反応
7 結語

第3章 有機分子触媒反応における計算化学の応用:立体選択性に関する理論的検討
1 はじめに
2 キラルリン酸触媒によるケトイミンの不斉移動水素化反応
3 キラルビスリン酸触媒によるアミドジエンとアクロレインの不斉Diels-Alder反応
4 キラルイミノホスホラン触媒によるアズラクトンの不斉1,6・1,8-選択的共役付加反応
5 グアニジン-ウレア触媒によるテトラロン型β-ケトエステルの不斉α-ヒドロキシル化反応
6 4-ピロリジン-ピリジン触媒による四置換アルケンジオールの幾何異性選択的アシル化反応
7 おわりに

第4章 多機能型キラルオニウム塩の設計に基づく高選択的分子変換
1 はじめに
2 キラル1,2,3-トリアゾリウム塩
3 テトラアミノホスホニウム塩
 3.1 共役塩基(トリアミノイミノホスホラン)の触媒作用
 3.2 塩基性アニオンを利用するイオン対協奏型触媒作用
4 アンモニウムベタイン

第5章 ホウ酸・ボロン酸触媒を用いるアミド縮合反応の開発と工業利用
1 はじめに
2 ボロン酸触媒
 2.1 ボロン酸触媒の発見
 2.2 塩基性基を有するボロン酸触媒
 2.3 カルボン酸無水物合成への展開
 2.4 ボロン酸・DMAPO複合触媒
 2.5 ボロン酸触媒の回収・再利用
 2.6 ホウ酸・ホウ酸エステル触媒
3 ワンポット脱水縮合―還元反応によるアルキルアミン合成
4 金属塩触媒を用いるアミド縮合反応
5 おわりに

第6章 丸岡触媒®及び関連触媒の開発
1 はじめに
2 相間移動触媒の化学
3 塩基性条件下での不斉相間移動反応
 3.1 丸岡触媒®及び簡素化丸岡触媒®の開発とα-アルキルアミノ酸合成への応用
 3.2 α,α-ジアルキルアミノ酸の実用的合成
 3.3 ペプチド類の末端官能基化
 3.4 ニトロアルカンの不斉共役付加
 3.5 ラセン型キラル相間移動触媒を用いるかさ高いα-アルキルアミノ酸の合成
4 中性条件下で使えるキラル相間移動触媒
5 水素結合供与型触媒としての相間移動触媒

第7章 トリスイミダゾリンの分子認識能を利用する不斉触媒システムの開発
1 はじめに
2 トリスイミダゾリン触媒の設計
 2.1 触媒の設計と合成
 2.2 触媒の評価(β-ケトエステルを利用する反応)
3 ハロラクトン化
 3.1 エンカルボン酸のブロモラクトン化反応
 3.2 アレンカルボン酸のヨードラクトン化反応
4 おわりに

第8章 大量スケール合成に適用可能な高エナンチオ選択的アシル化反応の開発
1 はじめに
2 触媒設計と合成
3 分子内不斉アシル基転位反応
4 分子間不斉アシル化反応
 4.1 d,l-1,2-ジオールの速度論的光学分割
 4.2 meso-1,2-ジオール類の非対称化反応
5 おわりに

第9章 超強酸性炭素酸を触媒として用いた分子変換
1 はじめに
2 強酸性炭素酸の合成と酸性度
3 炭素酸による触媒反応
 3.1 アキラルな炭素酸を用いた反応
 3.2 キラルな炭素酸を用いたエナンチオ選択的反応
4 おわりに


【第2編:分子変換システムの開発】

第10章 天然物合成を志向した水素結合供与触媒の創製
1 チオ尿素触媒を用いるβ-ヒドロキシアミノ酸等価体の不斉合成法の開発
2 (-)-Caprazamycin A の不斉全合成
3 不斉分子内オキサマイケル付加反応の開発及び生物活性化合物への応用

第11章 基質認識型触媒による位置選択的分子変換
1 はじめに
2 天然由来ポリオールの位置選択的アシル化
3 グルコピラノシドの触媒的位置選択的アシル化
4 配糖体天然物の位置選択的アシル化
5 天然物由来ポリオールへの展開
6 連続位置選択的官能基化に基づくエラジタンニン類の革新的全合成
7 鎖状アミノアルコールの位置選択的アシル化
8 アミノジエンの位置選択的エポキシ化
9 さいごに

第12章 グアニジン触媒を用いた不斉分子変換反応
1 グアニジン官能基とその反応性
2 グアニジンの窒素1つと求核剤との相互作用を介した触媒反応(Type-A)
3 グアニジンの窒素1つと求電子剤との相互作用を介した触媒反応(Type-B)
4 グアニジンの窒素2つと求核剤との相互作用を介した触媒反応(Type-C)
5 グアニジンの窒素2つと求電子剤との相互作用を介した触媒反応(Type-D)
6 グアニジンの窒素2つと求核剤,求電子剤との相互作用を介した触媒反応(Type-E)
7 おわりに

第13章 含窒素複素環式カルベン触媒の新展開
1 はじめに
2 NHC触媒の分類と特徴
3 チアゾリウム塩の分子変換
 3.1 交差ベンゾイン生成反応
 3.2 アザStetter反応
 3.3 Redoxエステル化反応
 3.4 ホモエノラート
 3.5 ヒドロアシル化反応
4 おわりに

第14章 有機触媒によるジフルオロカルベンの発生制御とその利用
1 はじめに
2 ジフルオロカルベンの利用に関わる問題と戦略
3 有機触媒によるジフルオロカルベンの発生と利用
 3.1 カルボニル化合物およびチオカルボニル化合物への–CF2–導入:CHF2X型化合物の合成
 3.2 ジチオエステルへのCF2=導入:硫黄置換1,1-ジフルオロアルケンの合成
 3.3 シリルエノールエーテルへの–CF2–導入:フッ素置換シクロペンタノンの合成
4 おわりに

第15章 有機触媒芳香族脱プロトン化による分子変換システムの開発
1 はじめに
2 有機超強塩基を触媒とする芳香族脱プロトン化修飾
3 系内発生HMDS触媒を用いる芳香族脱プロトン化修飾
4 触媒的脱プロトン化による芳香族ケイ素化反応

第16章 第一級アミンを用いた分子変換反応
1 はじめに
2 第一級アミン触媒の反応性
3 不斉反応への応用
 3.1 分岐型アルデヒドの反応
 3.2 分岐型ケトンの反応
 3.3 α-置換エナール,α-置換エノン
4 おわりに

第17章 選択的ペプチド触媒の開発
1 はじめに
2 イミニウムイオン触媒作用を示すペプチドの開発
3 ペプチド触媒固有の選択的反応の開発
4 2つのアミノ酸サイトが協同的にはたらくペプチド触媒の発見
5 おわりに

第18章 有機分子触媒を用いた光ペルフルオロアルキル化反応の開発
1 はじめに
2 有機色素を用いた可視光ヨウ化-ペルフルオロアルキル化
 2.1 エオシンYを用いた反応
 2.2 有機色素の検討
 2.3 光源の検討
 2.4 反応基質の検討
 2.5 反応機構に関する研究
3 おわりに

第19章 光励起ケトンを活性化剤とする分子骨格への直接的官能基導入法
1 はじめに
2 C-H 結合のシアノ化
3 C-H 結合のアルキル化
4 C-H 結合のアリル化
5 おわりに

第20章 多機能有機分子不斉触媒を用いる環境調和型ドミノ反応の開発
1 はじめに
2 エナンチオ選択的Rauhut-Currier反応を用いるα-メチレン-γ-ブチロラクトンの合成
3 アミド化/RCドミノ反応によるα-メチリデン-γ-ブチロラクタムの合成
4 極性転換RC型ドミノ反応によるテトラヒドロベンゾフラノンの合成
5 おわりに

第21章 有機触媒を用いたカルボン酸誘導体および光学活性アルコールとカルボン酸の合成,ならびに医薬品合成への応用
1 はじめに
2 MNBAとDMAPを組み合わせる脱水縮合反応系の開発
 2.1 MNBA法によるエステル合成
 2.2 MNBA法によるラクトン合成
 2.3 MNBAラクトン化の天然物合成への応用
 2.3.1 オクタラクチンAおよびBの不斉全合成
 2.3.2 (-)-テトラヒドロリプスタチンの不斉全合成
3 MNBAとDMAPOを組み合わせる脱水縮合反応系の開発
 3.1 MNBA法によるアミド合成
 3.2 MNBA法によるペプチド合成
4 不斉脱水縮合反応への展開
5 ラセミ第2級ベンジルアルコールの速度論的光学分割
6 ラセミ2-ヒドロキシカルボニル化合物の速度論的光学分割
7 ラセミカルボン酸の速度論的光学分割
8 キラルな非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)の合成


【第3編:応用シーズ】

第22章 有機分子触媒の有用物質合成への応用
1 有機分子触媒反応を有機化合物合成に用いる際の利点
2 不斉マイケル反応を鍵工程とするバクロフェンのワンポット合成
3 オセルタミビルのワンポット短時間全合成とフロー合成
4 ドミノ不斉マイケル/分子内アルドール反応を鍵工程としたエストラジオールメチルエーテルの全合成
5 まとめ

第23章 有用キラル合成素子の環境調和合成
1 はじめに
2 有機触媒を鍵とするキラルシクロヘプタノイド合成素子の合成
3 キラルbicyclo[5.3.0]decane 合成素子の設計と合成
4 結論

第24章 有機触媒による創薬を指向した生理活性天然物の実践的合成
1 はじめに
2 有機分子触媒を用いた生理活性天然物の全合成
 2.1 新規アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害剤Arisugacin類の全合成
 2.2 特異なインドリンスピロアミナール骨格を有するNeoxaline類の全合成
 2.3 有機分子触媒を用いたイソシアニドのα-付加反応
3 有機分子触媒を用いた有用ポリオール天然物の位置選択的モノアシル化

第25章 有機触媒重合を活用した機能性高分子材料の開発
1 はじめに
2 各種モノマーの有機触媒重合法
 2.1 環状エステルの開環重合
 2.2 環状カーボネートの開環重合
 2.3 エポキシドの開環重合
 2.4 アクリル系モノマーのグループ移動重合
3 機能性高分子材料合成への応用
 3.1 熱応答性ポリマー
 3.2 エラストマー
 3.3 ドラッグナノキャリア
 3.4 ミクロ相分離薄膜
4 おわりに

第26章 不斉ハロ環化反応による高機能性キラル合成素子の開発
1 はじめに
2 キラルホスフィン触媒を用いたアリルアミドの不斉ブロモ環化反応
 2.1 研究背景
 2.2 BINAP触媒を用いたアリルアミドの不斉ブロモ環化反応
 2.3 反応機構に関する考察
 2.4 ビスアリルアミドの非対称化型ブロモ環化反応への展開
 2.5 不斉ブロモ環化反応を鍵工程とするHIVプロテアーゼ阻害薬ネルフィナビルの合成
3 おわりに

第27章 二級アミン型不斉有機触媒反応の実用化に向けた触媒量低減化とアルカロイド合成への応用
1 はじめに
2 C4アルキル基を有するキラルピペリジン骨格構築反応の開発
3 添加剤による反応速度の加速と触媒量低減化の試み
4 α-スキタンチンの全合成への応用
5 おわりに

第28章 不斉森田-Baylis-Hillman反応を活用する創薬リード天然物の合成
1 はじめに
2 ホスラクトマイシン天然物の合成
3 チランダマイシン天然物の合成
4 ポリプロピオナートの立体選択的合成

第29章 有機分子触媒を鍵反応に利用した医薬中間体のプロセス開発
1 はじめに
2 頻尿治療薬中間体のプロセス開発
3 抗エイズ薬中間体のプロセス開発
 3.1 プロリン触媒による方法
 3.2 ジアリールプロリノール触媒による方法
 3.3 新規なジアリールパーフルオロスルフォンアミド型触媒の開発
4 C型肝炎治療薬中間体のプロセス開発
5 C型肝炎治療薬共通中間体のプロセス開発
6 おわりに

第30章 不斉有機触媒を用いた二環式ケトンの実用的な速度論的分割法の開発
1 はじめに
2 光学活性な二環式ケトンの特徴とメディシナルルート
3 安価で効率的なラセミ体合成法の構築
4 二環式ケトンの光学活性体取得法の構築
 4.1 酵素触媒によるケトンの速度論的分割法
 4.2 不斉有機触媒を用いたケトンの速度論的分割法
5 光学活性な二環式ケトンの工業化プロセス
6 おわりに