キーワード:
亜臨海水/分子シミュレーション/分解反応/食品廃棄物/資源化/下水/汚泥/木材/ケミカルリサイクル/資源エネルギー化/セルロース/有機塩素化合物/ダイオキシン/バイオマス資源/石油代替エネルギー/メタン発酵/固定化担体/生ごみ/プラスチック/無機材料/プラント
刊行にあたって
地球を取り巻く環境は想像以上に深刻な状況にある。人口増加,資源枯渇,地球温暖化,深刻な水・食糧不足,どれをとってもまだまだ先の問題であると楽観できるものは何一つ無い。中国における深刻な水不足や砂漠化の進行,食料輸出国から輸入国への転換。米国における石油価格の高騰から始まったコーンからのバイオエタノール製造による食品価格の連鎖高騰。このバイオエタノールの問題は,コーンの食品としての需要とエネルギー原料としての奪い合いから始まり,短期間に次々と食品価格を連鎖的に引き上げている。さらにこの連鎖は,二酸化炭素の重要な吸収源であるブラジルや東南アジアの豊かな森林面積の減少に急加速度を加えるという深刻な状況にまで進展している。
これに対し,われわれはWaste Refinery Engineeringという学問体系を構築しつつある。一般に廃棄物と呼ばれているものを,今のところは使い道のわからない未利用有価物ととらえ,これを資源・エネルギーに転換し,さらに設置すれば利益が出る,そういう技術を創り上げるための基礎・応用・実用化研究を進めている。わが国では,産業廃棄物が年間約4億1千万トン,一般廃棄物が5千万トン,合計4億6千万トン発生している。この中で70%以上が有機性廃棄物であり,これを資源・エネルギーに転換でき,しかも利益を生み出しうるような技術が確立できれば,わが国はもとより世界の廃棄物問題の多くを解決することになる。このような有機性廃棄物の資源・エネルギー化の核となる技術の一つとして“亜臨界水の利用”があげられる。
本書は,以上の観点から“亜臨界水処理による有機性廃棄物の資源・エネルギー化技術”を精力的に研究してこられた国内の研究者の方々に,それぞれの研究分野について分担執筆していただいた。亜臨界水の工学的な研究は乳幼児期にあり,恐らく本書がこの技術の成書としては世界初と思われる。従って,できるだけ,数理モデルやそれに伴う数学式を減らし,基礎現象をしっかり説明していただくこととした。またその基礎研究の応用としてのパイロットプラント,商用化プラントまで含めることとした。なお,本書には,メタン発酵や水素発酵,それに関連する微生物の固定化なども含めているが,これは,化学と生物が協同作業して初めて利益の生み出しうる資源・エネルギー化技術となる,というコンセプトに基づくものである。
以上,本書が亜臨界水の最新の生の情報をお届けでき,また,この技術の普及と更なる発展の一助になれば幸いである。
(「まえがき」より抜粋)
本書は2012年に『亜臨界水反応による廃棄物処理と資源・エネルギー化』として刊行されました。普及版の刊行にあたり、内容は当時のままであり加筆・訂正などの手は加えておりませんので、ご了承ください。
著者一覧
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第1章 亜臨界水とは
第2章 分子シミュレーション
1 はじめに
2 分子シミュレーションの基礎
2.1 統計力学に基づく分子シミュレーション
2.2 分子動力学法の概要
3 分子動力学解析の実際
3.1 原子間ポテンシャル
3.2 初期条件と境界条件
3.3 運動方程式の数値解法
3.3.1 粒子の回転に対するオイラーの運動方程式
3.3.2 オイラー角の4元数表示
3.3.3 拘束条件を含む運動方程式
3.3.4 エネルギー極小配置の探索法
4 分子動力学解析により得られる情報
4.1 ポストプロセス
4.1.1 原子構造解析法
4.1.2 モリフィケーション
【第1編 基礎技術】
第1章 分解反応
1 加水分解反応と水への可溶化
2 熱分解反応
第2章 抽出技術
第3章 Synthesis of Biodegradable Plastics Using the Sub-Critical Water Technology
1 Environment Friendly Plastics
2 The First Novel EDP Synthesized Using the Sub-Critical Water
3 Properties of BSA
4 Synthesis Producers
5 Processing of the PBSA
6 Properties of the PBSA
6.1 Mechanical Properties
6.2 Thermal Properties
7 Microstructure of the PBSA
8 Kinetics and Mechanism of the Synthesis of the PBSA
【第2編 応用編】
第1章 食品廃棄物
1 水産加工廃棄物処理
1.1 魚あらの亜臨界水処理による高速高度資源化
1.1.1 はじめに
1.1.2 魚あらのゼロエミッション型高速高度資源化技術の提案
1.1.3 基礎実験
1.1.4 実プロセスでの検証
1.1.5 実用化の可能性
1.1.6 おわりに
1.2 カニ・エビ殻からのキチン高速高効率生産
1.2.1 提案する方法
1.2.2 亜臨界水を用いたキチンおよび有用物質の生産
1.2.3 亜臨界酸水溶液を用いたキチンの生産
1.3 Converting Scallop and Squid Wastes to Valuable Materials and Energy Resources Using Sub-Critical Water Technology(ホタテのうろ,イカのごろの無害化と資源・エネルギー化)
1.3.1 Squid Entrails and Scallop Viscera Wastes
1.3.2 Zero Emission Approach and Sub-Critical Water Hydrolysis
1.3.3 Experimental Process
1.3.4 Production of Amino Acids and Organic Acids
1.3.5 Recovery of Harmful Metal Ions
1.3.6 Free Fatty Acids and Transesterification
2 亜臨界水処理によるBSE特定危険部位の不活化と高速高効率資源化システムの構築
2.1 はじめに
2.2 牛危険部位及び肉骨粉の不活化(無害化)とゼロエミッション型高速高度資源化技術の提案
2.3 動物実験による異常プリオン不活化の実証
2.4 おわりに
3 廃食用油の再資源化
4 廃棄野菜の減容化と資源・エネルギー化
4.1 序言
4.2 赤キャベツ残渣の亜臨界水処理実験
4.3 ベンチスケールでの赤キャベツ残渣の亜臨界水処理実験
4.4 今後の取り組み
5 おからの再利用
5.1 はじめに
5.2 超臨界・亜臨界水の物性および作用
5.3 実験
5.3.1 実験方法
5.3.2 試料おからの成分・組成
5.4 実験結果と考察
5.4.1 反応器内の状態変化
5.4.2 反応保持時間がおからの分解に与える影響
5.4.3 昇温速度がおからの分解に与える影響
5.4.4 おからの可溶化生成物の組成
5.4.5 セルロース粉末の亜臨界水加水分解
5.5 おわりに
第2章 下水汚泥の資源・エネルギー化
1 はじめに
2 連続式亜臨界水処理装置の試作およびその操作法
3 熱水のみによる消化汚泥の可溶化
4 過酸化水素の添加効果
5 まとめ
第3章 廃木材処理と資源エネルギー化
1 亜臨界水処理による木材のケミカルリサイクル
1.1 はじめに
1.2 木材の成分構成と従来の木材糖化法
1.3 流通式反応装置を用いた木材の亜臨界水・超臨界水処理
1.4 半流通式(半回分式)反応装置を用いた木材の亜臨界水処理
1.5 おわりに
2 Furan Compounds from Carbohydrates Using Sub-Critical Water
2.1 Catalysts in the preparation of 5-HMF and furfural
2.2 Methods of preparation of 5-HMF and furfural
2.3 Decomposition pathways of saccharides in sub-CW,formation of 5-HMF,furfural,and other by-products
2.4 Decomposition of saccharides in sub-CW,application of catalysts
2.4.1 Homogenous acids,effect of initial pH
2.4.2 Heterogeneous acids
2.5 Conclusions
3 セルロースの分解と資源化
3.1 はじめに
3.2 水熱条件下におけるセルロースの分子変換技術
3.2.1 セルロースの非平衡水溶化
3.2.2 非平衡可溶化セルロースの超高速酵素糖化
3.3 超臨界域を含む水熱条件下でのバイオマス関連物質の反応経路・速度論
3.3.1 セルロース
3.3.2 セルロース系糖類の水熱反応特性
3.3.3 ヘミセルロース関連糖類の水熱反応特性
3.4 おわりに
第4章 有機塩素化合物処理
1 有機塩素化合物を含んだ廃棄物の処理
1.1 有機塩素化合物を含んだ廃棄物処理の現状
1.2 亜臨界水を用いた有機塩素化合物を含んだ廃棄物処理の特長
1.3 亜臨界水中における有機塩素化合物の脱塩素反応
1.4 有機塩素化合物を含んだ廃棄物の処理試験
2 ダイオキシン・PCBを含んだ廃棄物の処理
2.1 ダイオキシン類,PCBの性質とその無害化処理法
2.2 亜臨界水を用いるダイオキシン類やPCBの分解
2.3 亜臨界水によるダイオキシン類やPCBの無害化方法の特徴
第5章 バイオマス資源の炭化による石油代替エネルギーの製造
1 はじめに
2 亜臨界水炭化処理の概要
3 酢液(口液)の利用
4 亜臨界水炭化処理に適したバイオマス資源
5 亜臨界水炭化処理条件
6 炭化物に含まれる不純物
7 炭化物の燃焼
8 亜臨界水炭化処理のプラント化
第6章 高速高消化率メタン発酵
1 亜臨界水を前処理とするメタン発酵
1.1 高速高消化率の原理
1.2 酢酸を用いたメタン発酵
1.2.1 メタン発酵の概要
1.2.2 酢酸を投与した場合のメタン発酵の検討
1.2.3 各種有機酸・アミノ酸を投与した場合のメタン発酵の検討
1.3 固定化担体を用いたメタン発酵
1.3.1 固定化担体を用いたメタン発酵の概要
1.3.2 メタン生成菌の新規固定化評価法
1.3.3 各種固定化担体のスクリーニング
1.3.4 竹炭を用いた高効率メタン発酵
1.4 固定化担体へのメタン生成菌の吸着機構
1.4.1 微生物の固体表面への付着機構
1.4.2 微生物と固体表面間に働く相互作用
1.4.3 メタン発酵菌群を構成する微生物
1.4.4 代表的な微生物の表面性状
1.4.5 固定化微生物によるメタン発酵
2 モルトフィード(ビール粕)によるメタン発酵
2.1 はじめに
2.2 方法
2.2.1 亜臨界水によるモルトフィード可溶化試験
2.2.2 可溶化液のメタン発酵
2.3 結果
2.3.1 モルトフィードの分解・可溶化
2.3.2 可溶化液のメタン発酵
2.4 モルトフィードの可溶化およびメタン発酵のエネルギー収支概要
2.4.1 モルトフィードの可溶化に係わる所要エネルギー
2.4.2 メタン発酵装置に係わる所要エネルギー
3 生ごみ亜臨界水処理
3.1 生ごみ発生量とメタンガス発酵処理
3.2 生ごみに対する亜臨界水処理の効果
3.2.1 模擬生ごみを用いた場合の亜臨界水処理条件
3.2.2 ジャーファーメンタ装置によるメタン発酵挙動
3.3 スーパー生ごみを用いた亜臨界水処理メタン発酵実証試験
3.4 亜臨界水処理による生ごみの資源化
4 バイオメタンガスバイク
第7章 プラスチックの再生
1 基礎技術
1.1 はじめに
1.2 亜臨界水によるプラスチック再生の特徴
1.3 亜臨界水による不飽和ポリエステル硬化樹脂の分解と再利用
1.4 おわりに
2 FRPの水平リサイクル
2.1 まえがき
2.2 亜臨界水分解によるFRPの水平リサイクル
2.3 亜臨界水分解反応の最適化
2.3.1 360℃における亜臨界水分解反応の検討
2.3.2 スチレン架橋部の熱分解開始温度230℃における亜臨界水分解反応の検討
2.3.3 スチレン-フマル酸共重合体の構造解析
2.4 FRPの亜臨界水分解のベンチスケール実証
2.4.1 亜臨界水分解プロセスのベンチスケール実証実験
2.4.2 無機物分離プロセスのベンチスケール実証実験
2.5 まとめ
第8章 無機材料の水熱創製
1 はじめに
2 ナノチューブ
3 ゼオライトの水熱ホットプレス法による固化体作製
3.1 ゼオライトの水熱固化
3.2 メソポーラスシリカの水熱固化
3.2.1 FSM
3.2.2 MCM
4 まとめ
【第3編 機器・装置・プラント】
第1章 流通式連続反応装置
第2章 プラント
1 はじめに
2 亜臨界水反応による廃棄物処理・リサイクルプラントの要件
2.1 原料変動への対応
2.2 腐食への対応
2.3 閉塞への対応
3 プラントの構成
3.1 廃棄物受入・貯蔵工程
3.2 前処理工程
3.3 原料調合工程
3.4 亜臨界水反応工程
3.4.1 加圧供給設備
3.4.2 加熱設備
3.4.3 反応器
3.4.4 熱回収・冷却設備及び連続排出機構
4 おわりに
【第4編 自治体の取り組み事例】
第1章 大阪府エコタウンプランにおける亜臨界水技術
1 はじめに
2 大阪府エコタウンプラン策定の経緯
3 大阪府エコタウンプランの特徴
4 亜臨界水反応による廃棄物再資源化事業の概要
5 今後の課題と展望
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