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人工光合成《普及版》 ―システム構築に向けての最新技術動向と展望―

Artificial Photosynthesis Current Technical Trend and Perspective(Popular Edition)

2013年刊「人工光合成―システム構築に向けての最新技術動向と展望―」の普及版。
人工光合成システムの実用化に向けて、光捕集、電荷分離などの要素技術の動向を国内第1線の研究者が解説している。

商品コード:
B1342
監修:
福住俊一
発行日:
2020年11月5日
体裁:
B5判・264頁
ISBNコード:
978-4-7813-1472-3
価格(税込):
5,280
ポイント: 48 Pt
関連カテゴリ:
ファインケミカル
テクニカルライブラリシリーズ(普及版)
ファインケミカル > 合成技術・製造プロセス開発

Review

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キーワード:

人工光合成/自然エネルギー/水素発生触媒/CO2還元触媒/半導体光触媒/色素増感太陽電池/有機薄膜太陽電池/過酸化水素/過酸化水素燃料電池

刊行にあたって

 2011年3月11日の東日本大震災による福島第一原子力発電所で発生した炉心溶融など一連の放射性物質の放出を伴った原子力事故以来、自然エネルギー、特に太陽エネルギーを利用する人工光合成に対する関心が高まっている。40年前に起きた第一次石油ショック以来、国際的にも国内的にも代替エネルギーとして原子力発電の重要性が高まった。さらに化石燃料の大量の消費に伴う二酸化炭素の排出による地球温暖化対策も加わって、日本の政策として原子力が優先されてきた。しかし、原子力事故の影響の大きさ、核廃棄物の処理の困難さを考えると将来的には脱原発の方向に向かわざるを得ない。当面は化石燃料に頼らざるを得ないが、資源としての化石燃料は言うまでもなく有限であるので、いずれ枯渇することは明らかである。
 そもそも化石燃料は光合成の産物であるので、人類が人工的に光合成を行ってエネルギーを獲得するのが本来の姿である。人工光合成の研究開発の歴史は古く、特に最近の進歩には目をみはるものがある。とはいえ人工光合成が代替エネルギー獲得の手段として実用化されるにはまだ長い年月が必要である。人工光合成は21世紀の人類の最大の課題と言っても過言ではない。長期的視野の基に国家100年の計として取り組むべき課題である。環境エネルギー問題の現状打破のために人工光合成に急に過大な期待を集めて失望させてしまってはならない。何より大事なのは息の長い継続的かつ地道な研究開発である。
 今回人工光合成システム構築に向けての最新技術動向について、その現状と展望をまとめることができたのは大変時宜にかなったものと考える。本書により、地球の未来を託すことができる若い人が人工光合成に興味を持ち、その実用化に向けて粘り強く取り組むことを大いに期待している。

本書は2013年に『人工光合成―システム構築に向けての最新技術動向と展望―』として刊行されました。普及版の刊行にあたり、内容は当時のままであり、加筆・訂正などの手は加えておりませんので、ご了承ください。

著者一覧


福住俊一   大阪大学
大久保敬   大阪大学
山田裕介   大阪大学
酒井 健   九州大学
洪達超    大阪大学;日本学術振興会
中薗孝志   九州大学
平原将也   新潟大学
八木政行   新潟大学
末延知義   大阪大学
森川健志   ㈱豊田中央研究所
佐藤俊介   ㈱豊田中央研究所
荒井健男   ㈱豊田中央研究所
上村恵子   ㈱豊田中央研究所

鈴木登美子  ㈱豊田中央研究所
山中健一   ㈱豊田中央研究所
梶野 勉   ㈱豊田中央研究所
前田和彦   東京工業大学
齊藤健二   新潟大学
阿部 竜   京都大学
荒川裕則   東京理科大学
東野智洋   京都大学
今堀 博   京都大学
平本昌宏   自然科学研究機構
松尾 豊   東京大学
山岡弘明   三菱化学㈱

執筆者の所属表記は、2013年当時のものを使用しています。

目次 +   クリックで目次を表示

第1章 人工光合成とは
1 化石燃料の消費
2 地球温暖化
3 化石資源の枯渇
4 石油の代替エネルギー
5 太陽エネルギー
6 バイオマスエネルギー
7 太陽電池
8 人工光合成の定義

第2章 人工光合成の基礎理論
1 電子移動反応とは
2 マーカス理論
3 電子移動反応の分類
4 長距離電子移動
5 外圏型電子移動反応の速度定数
6 光電子移動反応
7 電子移動の再配列エネルギー

第3章 光捕集と光電荷分離
1 光合成反応中心
2 多段階電子移動による電荷分離系
3 長寿命電荷分離状態を有するドナー・アクセプター2分子連結系
4 電子ドナー置換アクリジニウムイオン
5 超分子電荷分離系
6 おわりに

第4章 水素発生触媒
1 光触媒水素発生系における水素発生触媒
 1.1 はじめに
 1.2 形状および粒子径制御による白金触媒の高機能化
 1.3 白金ナノ粒子代替としてのルテニウムナノ粒子
 1.4 ニッケルナノ粒子の利用
 1.5 シュウ酸の電子源としての利用
 1.6 完全水中での有機光増感剤の利用
 1.7 まとめ
2 均一系白金錯体による水からの水素発生反応
 2.1 はじめに
 2.2 アミド架橋白金(II)二核錯体における水素生成触媒機能
 2.3 電気化学的手法による触媒反応機構の評価
 2.4 プロトン共役電子移動前の始状態について
 2.5 DFT計算による反応機構の考察
 2.6 可視光増感作用を併せ持つ白金錯体による光水素発生反応
 2.7 おわりに

第5章 水の酸化触媒
1 金属酸化物ナノ粒子による水の酸化触媒反応
 1.1 はじめに
 1.2 水の酸化触媒サイクル
 1.3 均一系金属錯体vs.不均一系金属酸化物
 1.4 金属酸化物粒子
 1.5 前駆体であるコバルト錯体由来の水酸化コバルト粒子
 1.6 複合金属酸化物触媒
 1.7 まとめと今後の展望
2 金属錯体触媒による新規な酸素発生反応
 2.1 はじめに
 2.2 酸素発生触媒の試験法について
 2.3 多核錯体から単核錯体へ
 2.4 ルテニウム単核錯体による酸素発生反応
 2.5 コバルト単核錯体による酸素発生反応
 2.6 その他の酸素発生触媒
 2.7 金属酸化物の影響について
 2.8 おわりに
3 合成錯体分子による水の酸化触媒の創製
 3.1 はじめに
 3.2 ジμ-オキソ二核マンガン錯体による不均一系水の酸化触媒反応
 3.3 単核ルテニウムアコ錯体による水の酸化触媒反応
 3.4 単核ルテニウムアコ錯体の光異性化による水の酸化触媒活性制御
 3.5 光異性化反応を利用した二核ルテニウムアコ錯体の合成
 3.6 おわりに

第6章 CO2還元触媒
1 金属錯体を用いるCO2還元
 1.1 水素貯蔵分子としてのギ酸
 1.2 ギ酸からの水素発生
 1.3 ギ酸の合成
 1.4 ギ酸と水素の相互変換
 1.5 おわりに
2 半導体/金属錯体ハイブリッド光触媒によるCO2と水を原料とした人工光合成
 2.1 はじめに
 2.2 金属錯体を反応場とする半導体/錯体ハイブリッド光触媒原理の実証
  2.2.1 CO2還元ハイブリッド光触媒
  2.2.2 p型応答を示す可視光応答性半導体の開発
  2.2.3 半導体/金属錯体ハイブリッド光触媒による可視光CO2還元反応
 2.3 水を電子源・プロトン源とする,太陽光による直接CO2還元
  2.3.1 水中、可視光でCO2を還元するハイブリッド光電極
  2.3.2 水を電子源・プロトン源とする,太陽光による直接CO2還元
 2.4 最後に

第7章 半導体光触媒
1 修飾型酸窒化物粉末を光触媒とした水の可視光分解
 1.1 研究の背景
 1.2 可視光応答型酸窒化物光触媒
 1.3 ZrO2修飾によるTaONの格子欠陥密度低減
 1.4 ZrO2/TaONのキャラクタリゼーション
 1.5 ZrO2/TaON光触媒の水素生成活性
 1.6 ZrO2/TaON光触媒上での一段階励起による水の可視光完全分解
 1.7 おわりに
2 金属酸化物光触媒・光電極触媒を用いたソーラー水分解
 2.1 はじめに
 2.2 バンドエンジニアリングによる金属酸化物の可視光応答化
 2.3 水分解の半反応に活性な可視光応答性金属酸化物光触媒
 2.4 金属酸化物から成るZスキーム光触媒
 2.5 固体間電子移動で駆動するZスキーム光触媒
 2.6 金属酸化物光触媒を用いた光電気化学的水分解
 2.7 金属酸化物ナノワイヤーの光触媒特性
 2.8 結言
3 可視光応答型光触媒を用いた水からの水素製造およびベンゼンからの直接フェノール合成
 3.1 はじめに
 3.2 可視光水分解の実証はなぜ必須なのか?なぜ実証困難であったのか?
 3.3 2段階励起機構による可視光水分解の実証
 3.4 酸化タングステン(WO3)光触媒の有する特異な反応特性
 3.5 2段階励起型水分解系における長波長利用
 3.6 2段階励起型水分解系のまとめと今後の展開
 3.7 光触媒を用いた有機合成
 3.8 白金助触媒担持型酸化タングステン光触媒
 3.9 WO3系およびTiO2系光触媒を用いたベンゼン水酸化反応
 3.10 WO3系およびTiO2系光触媒におけるフェノール生成機構
 3.11 WO3系光触媒を用いたベンゼンからの直接フェノール生成のまとめ
4 酸化物半導体光電極触媒および,そのタンデムセルによるSolar Hydrogenの製造
 4.1 はじめに
 4.2 Solar Hydrogenの製造法
  4.2.1 太陽電池と水の電気分解プロセスを組み合わせた水素製造
  4.2.2 光電気化学的な水分解水素製造
  4.2.3 粉末光触媒による水分解水素製造
 4.3 酸化物半導体光電極触媒を用いた水素製造
  4.3.1 TiO2光電極触媒を用いた太陽光水分解
  4.3.2 WO3光電極触媒を用いた太陽光水分解
  4.3.3 α-Fe2O3(ヘマタイト)光電極触媒を用いた太陽光水分解
  4.3.4 BiVO4光電極触媒による太陽光水分解
 4.4 酸化物半導体光電極と色素増感太陽電池を組み合わせたタンデムセルによる高効率太陽光水分解
 4.5 おわりに

第8章 色素増感太陽電池
1 色素増感太陽電池の開発
 1.1 はじめに
 1.2 色素増感太陽電池(DSC)の研究室レベルでの最高性能
 1.3 色素増感太陽電池サブモジュール,モジュールの作製とその性能や耐久性の試験
 1.4 色素増感太陽電池のその他のアプリケーションの提案
 1.5 市販されている色素増感太陽電池
 1.6 おわりに
2 新規π拡張ポルフィリンを用いた色素増感太陽電池
 2.1 はじめに
 2.2 ポルフィリン色素増感太陽電池
  2.2.1 ポルフィリン
  2.2.2 ポルフィリン色素増感太陽電池のセル最適化
  2.2.3 ルテニウム色素との比較
 2.3 新規π拡張ポルフィリンを用いた色素増感太陽電池
  2.3.1 縮環ポルフィリン増感色素
  2.3.2 プッシュ-プル型ポルフィリン増感色素
  2.3.3 その他のπ拡張ポルフィリン増感色素
 2.4 おわりに

第9章 有機薄膜太陽電池
1 有機太陽電池のためのバンドギャップサイエンス
 1.1 はじめに
 1.2 ドーピング技術
 1.3 pn制御
 1.4 共蒸着膜のpn制御
 1.5 ドーピングのみによるタンデムセル
 1.6 バンドマッピング
 1.7 第3分子導入
 1.8 まとめ
2 革新的有機薄膜太陽電池
 2.1 はじめに
 2.2 逆型有機薄膜太陽電池における特性向上
  2.2.1 順型と逆型の有機薄膜太陽電池の関係
  2.2.2 ポリマーによりサイズ制御された亜鉛ナノクラスターの利用
  2.2.3 ITO表面仕事関数制御による電子捕集効率向上
  2.2.4 吸収波長マッチングによるタンデム構造の効率向上
  2.2.5 逆型有機薄膜太陽電池におけるアナターゼ型酸化チタンの利用
 2.3 有機金属ペロブスカイトを用いた有機無機ハイブリッド太陽電池
 2.4 おわりに
3 フレキシブル有機薄膜太陽電池の開発と今後の展望
 3.1 はじめに
 3.2 有機薄膜太陽電池の開発動向
 3.3 有機薄膜太陽電池の原理・特徴
 3.4 有機薄膜太陽電池の特長
 3.5 今後の展開

第10章 ソーラー燃料としての過酸化水素
1 過酸化水素の製造と利用
2 水素と酸素からの過酸化水素製造
3 水と酸素からの過酸化水素生成光触媒反応

第11章 過酸化水素燃料電池
1 はじめに
2 一室型過酸化水素燃料電池
 2.1 銀正極と金負極を用いる系
 2.2 鉄フタロシアニン錯体修飾電極(正極)とニッケル負極を用いる系
 2.3 鉄含有シアノ架橋金属錯体修飾電極(正極)とニッケル負極を用いる系
3 マイクロリアクタ利用型燃料電池
4 二室型燃料電池
5 まとめ

第12章 まとめと今後の展望

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