キーワード:
触媒 / 触媒劣化 / カーボンニュートラル / 三元触媒 / 軽油脱硫触媒 / ケミカルリサイクル / メタネーション / CCR / ナフサ / メタノール合成 / 排ガス浄化触媒 / PEM型水電解 / バイオマス / 水素化脱硫触媒 / 多元素合金 / FCC触媒 / ゼオライト触媒 / 寿命試験 / 劣化診断
刊行にあたって
化石資源は産業革命以来,人類に多大な恩恵と繁栄をもたらし,社会の発展を支えてきた。しかし,21世紀に入って,膨大な化石資源の消費は地球温暖化をもたらし,世界的に異常気象を引き起こし,人類の生存すら脅かす深刻な問題となってきた。これを解決するには化石資源の使用を止め,再生可能エネルギーを用いた持続社会を実現しなければならない。(中略)
触媒の開発には従来数年以上必要としていたが,これからの触媒の開発は,短期間で迅速に行われなければならない。そのためには,触媒設計が極めて重要で,最新の触媒設計,触媒性能評価,活性予測,劣化触媒の解析と評価等などの最先端の技術が要求される。さらに,工業触媒は活性が高いだけでは工業化できない。過去において多くの触媒が開発されてきたが,耐久性がなく工業化できなかった例は少なくなく,工業触媒の開発は,ほとんどが触媒寿命との戦いであったと言っても過言ではない。今後必要とされる触媒プロセスには,今までにない反応条件や触媒,そしてCO2やバイオマスなどの新たな原料も必要とされる。新たなプロセスや原料は,生成物として中間体やタールなどの不純物を含むために従来とは異なる触媒毒や劣化現象を生じる可能性がある。そのためには,今までの工業触媒の開発の知見を知り,新たな原料の精製技術と耐久性触媒とプロセスを開発しなければならない。さらに,これらの工業触媒の開発に必須な技術は触媒反応の迅速な評価と劣化触媒の詳細な物性試験である。これらの評価と試験方法に関する技術の進歩は著しい。
今回,触媒の開発と触媒の劣化対策に関して第一線で活躍しておられる企業・大学・研究機関の先生にご協力頂き執筆頂いた。今後必要とされるカーボンニュートラルのための工業触媒の開発のお役に立てることができれば幸いである。
室井髙城
(本書「刊行にあたって」より抜粋)
著者一覧
町田正人 熊本大学
関 浩幸 日揮触媒化成㈱
Artem D Vityuk BASF Corporation
戸室輝之 エヌ・イー ケムキャット㈱
岡田 治 ㈱ルネッサンス・エナジー・リサーチ
鎌田博之 ㈱IHI
小泉直人 日揮ユニバーサル㈱
寺井 聡 東洋エンジニアリング㈱
Vladimir Fridman Clariant Corporation
Sunil Panditrao Lummus Technology LLC
加藤裕樹 三菱ケミカル㈱
岡島利典 エヌ・イー ケムキャット㈱
吉永典裕 ㈱東芝
金井勇樹 日本ケッチェン㈱
古川森也 大阪大学
濱田 玲 日揮触媒化成㈱
笘居高明 東北大学
横井俊之 東京科学大学
久間 馨 信州大学
難波優輔 信州大学
ヴァラデスウェルタ ヘラルド 信州大学
アスペラ スーサン 信州大学
古山通久 信州大学
熊谷賢一 ヤマハ発動機㈱
見野越洋行 ㈱SUBARU
千代田範人 コスモエネルギーホールディングス㈱
目次 + クリックで目次を表示
第1章 触媒の劣化メカニズムと対策
1 触媒劣化
1.1 触媒劣化現象
1.2 劣化原因
2 触媒毒
2.1 重金属
2.2 ローンペアを持つ化合物
2.3 CO
2.3.1 水素化反応
2.3.2 アンモニア合成
2.3.3 燃料電池
2.3.4 COによる選択性の向上
3 Sによる被毒
4 ハロゲン
5 重金属による選択性の付与
6 炭素析出
6.1 コーク生成機構
7 触媒自体の変化
7.1 シンタリング
7.2 構造変化
8 劣化対策
8.1 劣化原因の究明
8.2 耐S触媒
8.2.1 耐S触媒
8.2.2 S吸着サイトの増加
8.2.3 サワーシフト触媒
8.2.4 原料Sの吸着除去
8.3 合金化による劣化対策
8.4 担体との相互作用
8.5 炭素析出
8.5.1 Pt粒子の孤立化
8.5.2 炭素質前駆体の除去
8.5.3 生成カーボンの抑制
8.5.4 脱水素反応
9 反応器材質
第2章 三元触媒の熱劣化挙動
1 三元触媒の構成
2 三元触媒の熱的変化
3 シンタリング
4 相変化
5 揮散
6 界面反応
7 包埋
【第2編:劣化対策の事例】
第3章 軽油脱硫触媒とその劣化
1 はじめに
2 軽油脱硫触媒について
2.1 これまでの脱硫触媒
2.2 脱硫活性点構造
2.3 活性種のタイプ
3 軽油脱硫触媒の劣化
3.1 コーク堆積による劣化
3.2 吸着被毒による劣化
3.3 活性成分の変質
3.4 活性種タイプ別の劣化
3.5 その他
4 おわりに
第4章 石油化学および石油精製プロセスへの廃プラスチック熱分解油の導入検討
~ケミカルリサイクルの普及のために~
1 はじめに
2 評価されるべきPyOilの主要パラメータ
2.1 PyOilの沸点分布
2.2 PyOil中の好ましくない不純物
2.3 PyOilの組成
3 廃プラスチック由来の熱分解油の既存設備への導入検討
3.1 スチームクラッカー(エチレン装置)
3.2 接触改質装置(CRU)
3.3 流動接触分解(FCC)
3.4 ディレイドコーキング装置(DCU)
3.5 原油蒸留装置(CDU)
4 おわりに
第5章 高効率水素製造プロセスと触媒
はじめに
1 一般化学用水素製造(水蒸気改質)技術
2 燃料電池用天然ガス改質システム
2.1 既存の水素製造用触媒技術の問題点
2.2 燃料電池用改質触媒技術の適用
2.3 PEFC用天然ガス改質装置
2.3.1 CO除去触媒
2.3.2 PEFC用天然ガス改質装置の開発状況
2.4 硫黄被毒の防止による改質触媒の劣化防止と低S/C化
2.4.1 水蒸気改質触媒における硫黄被毒の影響
2.4.2 超高次脱硫による硫黄被毒の防止
おわりに
第6章 CO2を原料とするメタネーション触媒の高耐久化
1 はじめに
2 メタネーション触媒の劣化メカニズム
3 耐久性に優れるメタネーション触媒の開発
4 まとめ
第7章 UOPのCCR触媒再生プロセス
1 はじめに
2 触媒の劣化と再生処理
2.1 プラットフォーミング反応
2.2 コークの性状
2.3 γ‒Al2O3の塩素化,および金属の再分散
2.4 水素還元
3 触媒連続再生プロセス
3.1 CCRプラットフォーミングプロセス
3.2 連続触媒再生機構
3.3 CCRプラットフォーミングプロセスの優位性
4 Chlorsorbシステム
5 おわりに
第8章 メタノール合成プロセス
1 はじめに
2 タノール合成反応とメタノール合成プロセス
3 メタノール合成触媒の劣化と防止対策
4 触媒層温度分布の最適化 ―メタノール合成反応器―
5 おわりに
Chapter 9 The CATOFIN Light Paraffin Non- Oxidative Dehydrogenation Technology on CrOx/Al2O3 Catalyst
1 Fundamentals of the Dehydrogenation Process
2 Original CATOFIN Dehydrogenation Technology Design
3 CrOx/Al2 O3 CATOFIN catalyst and its stability
4 Improved CATOFIN Process with Heat Generating Materials (HGM)
第10章 イソブタン酸化脱水素用触媒の高性能化と劣化抑制
1 はじめに
2 イソブタン酸化脱水素反応用Cr修飾メソポーラスシリカ触媒の開発
2.1 イソブタン酸化脱水素反応に好適な触媒系の探索
2.2 Cr修飾メソポーラスシリカ(Cr-SBA-15)の開発
2.3 Cr-SBA-15による高性能化要因と反応機構
3 Cr,Mo二元修飾によるイソブタン酸化脱水素反応用触媒の劣化抑制
4 まとめ
第11章 シリーズハイブリッド乗用車における三元触媒浄化反応モデルの構築
1 はじめに
2 SHEVの排出ガス特性
3 TWC反応メカニズム調査と反応モデル構築
4 エンジン再始動時の浄化挙動再現
4.1 速度パラメータフィッティング
4.2 λに応じた速度パラメータ制御の導入
5 Rh 還元賦活挙動のモデル化による冷間始動時の浄化挙動再現
6 おわりに
第12章 PEM水電解用イリジウム低減技術
1 はじめに
2 PEM水電解セルおよびMEAの構成
3 スパッタリング法による触媒層形成技術
4 スパッタリングによる電極触媒作製法および粉末触媒との比較
5 粉末触媒との比較
6 耐久性評価
7 スパッタ電極大型化技術
8 さいごに
第13章 バイオマス原料の精製
1 バイオメタン
1.1 バイオメタン成分
1.2 バイオガス中のシロキサン除去
1.3 バイオガス中のH2S除去
1.4 バイオガスからのCO2分離
2 バイオマス発電
3 バイオエタノール
3.1 バイオエタノールの不純物
3.2 バイオエタノールからエチレン
3.3 バイオエタノール副生CO2の精製
4 バイオディーゼル油(BDF)
4.1 脂肪酸メチルエステル(FAME)
4.2 油脂の水素化によるSAFの製造
5 ウッドマスから芳香族
6 ウッドマスのガス化合成ガス
6.1 バイオ合成ガス中のHCN
6.2 バイオガスの熱分解による酸性ガス
7 都市ごみのガス化
7.1 ガス化炉
7.2 塩素除去
7.3 タール除去
7.4 発酵法によるエタノール合成
第14章 水素化脱硫触媒の再生技術
1 はじめに
1.1 水素化精製
1.2 使用済み触媒の再生利用
1.3 使用済み触媒の再生に伴う構造変化
2 使用済み触媒のラボ再生実験
2.1 使用済み触媒の再生性評価
2.2 再生温度の影響調査
2.3 活性金属の結晶成長について
3 工業再生
3.1 使用済み触媒の抜き出し
3.2 前処理および使用済み触媒の分析
3.3 工業再生
4 おわりに
第15章 触媒再生の実際
1 劣化触媒の再生
2 洗浄による再生
3 水素による再生
3.1 HHS(Hot Hydrogen Stripping)
3.2 溶解水素による再生
4 カーボンバーンによる再生
4.1 カーボン付着触媒の酸化による再生
4.2 Pd/Al2O3の再生方法
4.3 Pt,Ni,Cu触媒の再生
4.4 複数の反応器による切り替え式再生
4.5 単一反応器による再生
4.6 移動床による連続再生(CCR)
4.7 連続再生
5 FT 合成触媒の再生
6 金属の再分散
7 ゼオライト触媒の再生
7.1 ハイシリカZSM-5
7.2 修飾ZSM-5
8 オフサイト再生
【第3編:触媒の設計指針】
第16章 多元素合金を基盤とした超高耐久性触媒の設計指針
1 緒言
2 研究の背景
3 多元素合金触媒の設計指針
4 Pt–Co–In/CeO2の構造解析
5 Pt–Co–In/CeO2の触媒性能
6 反応機構に関する検討
7 結言
第17章 機械学習および多目的最適化手法を用いたFCC触媒設計
1 はじめに
2 流動接触分解(FCC)について
3 FCC触媒と活性劣化要因
4 FCC触媒の性能評価
5 触媒設計
5.1 教師データの取得
5.2 応答曲面(反応成績予測モデル)の作成
5.3 パレート最適解の取得(仮想実験)
5.3.1 前提条件の設定
5.3.2 目的の設定
5.3.3 多目的最適化の実施条件
5.4 最適解の絞り込みと決定
5.5 設計の妥当性検証
6 おわりに
第18章 CeO2ナノ粒子酸素キャリアの劣化とその対策
1 はじめに
2 焼結によるナノ粒子の劣化挙動とその抑制策
3 ナノ粒子の露出面の劣化と再生
4 おわりに
【第4編:触媒の性能評価・活性予測】
第19章 ゼオライト触媒プロセスの最前線:活性点の位置・状態制御と触媒性能
概要
1 ゼオライト内の活性点の位置・状態制御
2 骨格内Al原子の位置を制御したZSM-5の合成と触媒特性
2.1 骨格内の酸点分布制御
2.2 酸点分布の異なるZSM-5の触媒特性
3 酸点分布の異なるCHA型ゼオライトの合成と触媒特性
4 金属含有ゼオライトの位置・状態制御
5 まとめと今後の展望
第20章 データ駆動時代の多元素ナノ合金の安定性・触媒特性の予測
1 緒言
2 ナノ合金の安定性と配置エントロピー
3 データ駆動による多元素ナノ合金の安定配置の予測
4 データ駆動による多元素ナノ合金の触媒活性予測
5 データ駆動による担持触媒の活性起源の解明
6 まとめ
【第5編:劣化触媒の解析・診断・評価】
第21章 迅速寿命試験による劣化現象の理解と寿命推定
1 触媒劣化
1.1 劣化現象
1.2 劣化現象と高SV 反応
2 劣化予測
2.1 反応熱の温度パターンからの予測
2.2 高SV反応による劣化予測
2.3 高SV間欠運転による劣化予測
2.4 加速試験
2.5 周期的パルス法
2.6 触媒の熱処理
3 劣化原因
3.1 劣化原因の推測
3.2 触媒層上部と下部の触媒の物性分析
4 劣化試験
4.1 一次反応式からの推定
4.2 簡易劣化試験
4.3 触媒毒
4.4 磨耗試験
5 触媒寿命試験
5.1 懸濁床
5.2 反応器による試験
5.3 籠入れ触媒による試験
第22章 MT システムによる触媒劣化診断
1 はじめに
2 触媒劣化診断概要
2.1 法規
2.2 車両に求められる機能
2.3 触媒劣化の概要
2.4 従来技術の診断方法の課題
3 MTシステム適用考え方
3.1 MTシステム適用の可能性
3.2 車載するための必要事項
3.2.1 演算負荷とリアルタイム性
3.2.2 リアルタイム診断の検討
3.3 特徴データ
3.3.1 時系列での成立性
3.3.2 特徴を表すデータに変換
4 検証結果
4.1 単位空間設定
4.1.1 単位空間の設定データ
4.1.2 設定単位空間の検証
4.2 触媒劣化時の距離
5 まとめ
第23章 XPS分析によるロジウム表面状態と触媒ライトオフ性能の評価
1 まえがき
2 実験方法
2.1 XPS分析によるRh表面状態の評価
2.1.1 XPS分析装置の仕様
2.1.2 サンプル調製
2.1.3 XPS分析
2.2 ライトオフ試験を模擬したXPS分析によるRh表面状態の評価
2.2.1 サンプル調製
2.2.2 反応炉での前処理
2.2.3 XPS分析
3 実験結果
3.1 XPS分析によるRh表面状態の評価
3.1.1 Rh/ZCの表面組成
3.1.2 Rh 3dのXPSスペクトルのピーク分離
3.2 ライトオフ試験を模擬したXPS 分析によるRh表面状態の評価
3.2.1 耐久処理条件が異なるRh/ZCのXPS分析
3.2.2 CO還元処理前後におけるRhの表面状態
3.2.3 CO還元処理後のメタルRh割合とライトオフ性能
4 まとめ
第24章 FCC触媒の新規強制劣化方法
1 はじめに
2 現在の模擬平衡化方法の課題
2.1 Mitchell法
2.2 その他の模擬平衡化方法
3 新規模擬平衡化方法の開発コンセプト
3.1 目的
3.2 Ni担持方法の改良イメージ
4 実験
4.1 Ni溶液のHSP値算出
4.2 阻害溶媒の選定
4.2.1 模擬平衡化触媒の調製
4.3 評価方法
4.3.1 EPMA分析
4.3.2 ACE-MAT評価
5 結果および考察
5.1 触媒粒子状の金属分布
5.2 活性評価結果
5.3 水熱劣化条件の改良
6 まとめ
CO2由来液体燃料の最前線
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メタネーションとグリーン水素の最新動向
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脱石油に向けたCO2資源化技術
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直接的芳香族カップリング反応の設計と応用
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触媒劣化
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